2015年03月18日

もののあわれについて728

入道の御門は、御行をいみじくし給ひて、内の御事をも聞き入れ給はず。春秋の行幸になむ、昔思ひ出でられ給ふ事も交りける。姫宮の御事をのみぞ、なほえ思し放たで、この院をば、なほ大方の御後見に思ひ聞え給ひて、うちうちの御心よせあるべく奏させ給ふ。二品になり給ひて、御封などまさる。いよいよはなやかに御勢添ふ。




法王陛下は、御修行を立派にされて、御所の事に対しても、耳をおかしにならない。ただ、春秋の行幸には、昔がしのばれるのであった。姫宮の御事だけは、今も思いきれず、六条の院、源氏は、表向きの御後見役として、内輪の細かなお心遣いをされるように、主上にお頼みする。それで宮は、二品に進まれて、御封なども増えるので、益々、華やかに御勢いが増すのである。

親王の位は、一品から、四品まである。




対の上、かく年月に添へて、方々にまさり給ふ御おぼえに、「わが身はただ一所の御もてなしに、人にはおとらねど、あまり年つもりなば、その御心ばへもつひにおとろへなむ。さらむ世を見はてぬさきに、心と背きにしがな」と、たゆみなく思しわたれど、さかしきやうにや思さむとつつまれて、はかばかしくもえ聞え給はず。内の帝さへ、御心よせことに聞え給へば、おろかに聞かれ奉らむもいとほしくて、渡り給ふ事、やうやう等しきやうになりゆく。さるべき事、道理とは思ひながら、「さればよ」とのみ安からず思されけれど、なほつれなく同じさまにて過ぐし給ふ。東宮の御さしつぎの女一の宮を、こなたに取り分きてかしづき奉り給ふ。その御扱ひになむ、つれづれなる御夜がれの程も慰め給ひける。いづれもわかず、うつくしくかなし、と思ひ聞え給へり。




対の上、紫の上は、このように年月の経るにつれて、それぞれに良くなってゆく、婦人方の評判に比べて、我が身は、ただ殿様、源氏のお一方の扱いで、誰にも負けずにいるが、年を取りすぎたら、殿の愛情も終いには、衰えるだろう。そんな仲にならぬ前に、進んで、世を捨てたいと、諦めずに考えるのだが、生意気と思われると憚られて、はっきりとは、申し上げられない。
今上陛下までが、御援助を特別にして、差し上げるので、疎略なと、お耳にあそばすことがあれば、気の毒で、源氏のお通いされる回数は、次第に、紫の上と、同じになってゆく。それも当然、無理のないことと、思う一方で、思ったとおりと、心中は穏やかではない。が、それでも、素知らぬ顔で、今まで通りにしていらっしゃる。
東宮のすぐ下の、女一の宮を、こちらで特に大切にして、養育される。そのお世話に、する事もない独り寝の夜も、気を紛らわせておられる。どの宮も、可愛く愛しいと、思い上げていた。

御夜がれ
つまり、床を共にしないということ。




夏の御方は、かくとりどりなる御孫あつかひをうらやみて、大将の君の典侍腹の君を、せちに迎へてぞかしづき給ふ。いとをかしげにて、心ばへも、程よりはざれおよずけたれば、おとどの君もらうたがり給ふ。すくなき御つぎと思ししかど、末にひろごりて、こなたかなたいと多くなり添ひ給ふを、今はただこれをうつくしみあつかひ給ひてぞ、つれづれも慰め給ひける。




夏の御方、花散里は、あれこれの孫宮たちのお世話を妬み、大将の君の典侍腹の子を、せがんで引き取り、養育される。
美しく、気性も、年の割りには、聡くませているので、殿様、源氏も可愛がる。子が少ないと思っていたが、孫は沢山になり、こちら、あちらで、次々に多く増えるので、今はただ、この孫たちを可愛がり、世話することで、退屈も、慰めるのである。

典侍の腹の子・・・
それは、源氏の乳母の子である、惟光の娘である。その娘に産ませた子。
その源氏の孫を、源氏の女である、花散里が育てるという。
大将である、夕霧も、花散里に育てられた。




右の大殿の参りつかうまつり給ふこと、いにしへよりもまさりて親しく、今は北の方もおとなびはてて、かの昔のかけかけしき筋思ひ離れ給ふにや、さるべき折りも渡りまうで給ふ。対の上にも御対面ありて、あらまほしく聞え交し給ひけり。




右の大殿、右大臣、髭黒のことである。
しげしげと、参りお仕えするのは、昔以上に隔てなく、今は北の方も、立派な夫人となり、院も、あの昔の色めかしいことは、諦めたのか、何かの折には、よくお越しになる。
対の上にも御対面があり、仲睦まじく付き合っていた。

この、北の方は、玉葛である。




姫宮のみぞ、同じさまに若くおほどきておはします。女御の君は、今はおほやけざまに思ひ放ち聞え給ひて、この宮をばいと心苦しく、をさなからむ御女のやうに、思ひはぐくみ奉り給ふ。




姫宮だけが、相変わらず、若いままで、おっとりとしている。
女御の君は、今は主上にお任せ申し上げて、この姫宮のみを気に掛けて、まるで、幼いお嬢様のように、守り育てているのである。

以上は、皆々の近況である。








posted by 天山 at 05:58| もののあわれ第12弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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