2014年10月02日

国を愛して何が悪い158

「我」の自覚は、生の悦びとともに、その翳りのように、生の空しさの自覚を伴うものだ。
亀井

天平びと、大宮びとの、衰退は、これである。
それは、衰退ではなく、自覚なのである。

初期、中期の万葉の歌にも、我という言葉が入るが、それの我という意識と、別な「我」という意識である。

それは、
仏教伝来や漢詩文の影響によって促がされ、様々なかたちでの表現を迫られるわけだが、すでに人麿歌集に、「まきむくの、山辺とよみて行く水の、水泡のごとし世の人我は」のような一首がある。人麿の自作かどうか。また年代も不明だが、この傾向は、「世の中は空しきもの」「うつせみの代は常なし」と言ったしらべとなって、旅人、憶良、家持なまでつづいているし、同時に、漢詩文の方からは、「遊」と「仙」と「隠」の影響をうけたことも指摘しておいた。
と、亀井は、言う。

自我というものの、自覚である。

今までの、私とは、違う、私の存在の在り方を、自覚した。
それは、学んだものである。
観念的なものを、学んだ。

これは、不安を生む。

亀井は、神人分離の精神を言うが・・・
それは、自然との分離と考えても良い。

それは、日本人だけのことではない。
人類の問題である。

自我意識の問題は、インドのみならず、西欧の哲学、思想で、延々と語られた問題である。

日本にも、その自我、この場合は、日本流の自我の問題である。

仏教の無常観は、これを土台にして、考えられたはずだ。

歌も漢詩も、次第に、その詩境に、一種の空虚感、虚無感が、現れてくる。

そこから様々な現世遊離のすがたがあらわれてくるし、或いは「事」と「言」とが密着せずに、自意識だけが回転してゆくような傾向もみられる。天平のいわゆる盛時を迎えるにつれて、特別の不安と動揺が次第に深まって行ったように思われる。
亀井

自意識・・・
自我の新たな目覚め・・・
それは、実は、新鮮な目覚めである。

それに、戸惑ったのが、天平びとである。

亀井の引用を少し長いが、掲載する。

ところで私は万葉集を読みながら、時々こんなことを考える。作者名のあきらかな人々の中には、当時の政治の最高責任者はむろん、高位高官の人が少なくない。初期万葉びとは言うまでもない。・・・
今日、「万葉びと」の名で政治家の姿を連想するのはむずかしいが、彼らの多くは政治家であった。私のいう空虚感は人生観や詩境の問題だけではなく、時代の政治とも関連しているのではないかということである。

政治的陰謀や駆引、また一身上の進退、自分の属する氏族への顧慮、派閥の問題、支配者としての民衆の統治など、彼らは政治のなまなましい現実にふれていた筈だ。・・・

万葉集の中に、あからさまな政治批判や風刺の歌が、幾編かはあってもよさそうなものだ。下級の官人から出てもいいし、作者未詳の民衆でもよい。いわゆる「政治詩」と言ったものは一篇もない。採集の過程で削除されたか。

と、いうことである。

自我の意識と、政治的配慮・・・

しかし、民衆の中にも、政治的は、皆無である。

防人の歌にしても、政治批判は無い。

仏教と、政治の歌が皆無であるという、事実。
編纂者の作為があるのか・・・
何とも、不明である。

再度、自我の意識に戻ると、日本には、主語が無い文が多い。
その代表な物語は、源氏物語である。
そして、それは、現在に至るまで、続いている。

たゆたふ・・・たゆたひ・・・
曖昧さ・・・

自我を強烈に意識すると、日本人は、とても、不安になるようである。
これは、風土の問題か・・・

江戸の、松尾芭蕉でさえ、松のことは、松に、竹のことは、竹に習え、と言うのである。
つまり、自然とつながる意識が存在しているという、日本人の精神である。

自然との同通は、縄文期から発生した、心情である。
それは、心情であり、世界の何処にも無い、自我意識である。

つまり、つながる意識である。
万葉の歌に、亡き人を偲ぶと、雲や雨が、亡き人とつながる。
更に、煙が立つと、亡き人の心と、見る。

それが、漢詩や、仏教により、強烈に自我というものを、意識する事を求められたとすると。いや、意識せざるを得ない時代になるのである。

それは、進化でもある。
精神の進化とも言える。

現代から見れば、野蛮な行為も多々あるが、当時は、それを現在のような野蛮な意識を持たなかった。

時代は、進化し、更に、人間の精神も進化するということである。

そして、多分に日本の場合は、外から来たものに、大きく影響されるのである。
それは、周囲が海に囲まれている、島国という、風土の問題である。



posted by 天山 at 06:33| 国を愛して何が悪い3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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