この吹上御所は、昭和天皇から、お住まいになられている。
昭和36年11月30日より、一週間に渡り、吹上文庫から、引越しされた。
その、吹上文庫に、昭和天皇は、18年間も、住んでおられた。
吹上文庫は、開戦一年後の、昭和17年の大晦日に、防空壕として、作られたものである。
地上一階、地下二階の建物。
日当たりが悪く、湿気も多い。
日陰の身であるという、表現が、ぴったりくる状況である。
側近が、再三、新居新築を、お勧めするが・・・
昭和天皇は、頑として、受け付けなかった。
国民の住宅難が緩和され、伊勢神宮の改築を見届けて、ようやく、新築を許したのである。
ここでも、驚くべきことである。
君主たるものは、国民以上の生活を望み、また、そのようにする。
我が身が、第一である。
しかし、天皇は、歴代天皇に習い、まず、国民の生活を鑑みるのである。
昭和天皇の、質素さが、現れる話に、引越しの際に、ご自分用のスリッパを携えて来たという。
その、スリッパ・・・
半分ほど、擦り切れていた。
それでも、天皇は、新居で、それを使われたという。
さて、国民の多くは、知らないことが多い。
天皇陛下は、御所を所有しているのか・・・
実は、天皇は、一切の土地、建物を持たない。
敗戦後、すべての、財産を政府、つまり、日本国に、明け渡したのである。
勿論、アメリカ占領軍、GHQの指導の下に・・・
しかし、天皇は、何の不足も、お言葉にされなかった。
当然として、受け入れた。
この、当然・・・
天皇は、何一つ持つことなくとも、天皇という、権威が存在するのである。
現在も、皇居に限らず、東宮御所、京都御所、葉山、那須、須崎の、各御用邸から、車に至るので・・・
更に、皇族の家屋敷も、すべてが、国有財産である。
それ以前は、すべて皇室財産であった。
日本国憲法施行後に、国有財産となった。
であるから、天皇は、国から、借りているのである。
勿論、無料である。
これを見ても、解るように、天皇は、何一つ所有せずとも、いいのである。
世界の王たちは、その財産により、国王である。
一々、例を上げないが・・・
天皇は、すべての物が、国民の物であって、いいのだ。
国民のために、存在しているのである。
皇居の住所は、東京都千代田区千代田一番、である。
天皇は、戸籍を持たないので、本籍は無い。
しかし、その地を、本籍としている人たちが、大勢いるのである。
日本では、何処に本籍を置いても、かまわないからである。
さて、無一文、何も持たない天皇陛下は、税金を払っている。
それを説明すると・・・
昭和天皇は、著作の印税が入れば、確定申告し、所得税を払う。
また、天皇が、侍従などの名義で、株を買い、その得た利子、配当収入についても、確定申告し、所得税を払う。
戸籍を持たれないが、区民税と、都民税は、納めている。
更に、年収というものも得ている。
それは、皇室経済法に基づくもので、国が負担する、皇室費ということになる。
天皇と天皇一家の生活費、内延費である。
その内延費には、所得税がかからない。
その金額は、そのまま、手取り額である。
皇族費と合わせて、年間、20億円程度である。
それらは、余っても、国に返す必要がない。
ということは・・・
質素、倹約の天皇の生活費は、あまり凄いものではないから、余る。
天皇の経費の様子・・・
昭和62年度のものが、ある。
人件費、物件費、衣類、身の回り品、食事、厨房機器、恩賜賞の品、奨励金、災害見舞金、交際費、私的旅行、研究費、教養費、神事に関するもの、その他、となる。
人件費と、物件費が一番多い。
人件費とは、私的使用人の給料である。
内延費の三分の一を占める。
残りを、天皇、皇后、皇太子一家が、使用する。
その内延費は、人事院の、公務員給与の上昇率、東京区部の消費者物価指数が、ともに、10パーセントを超えたときを目安に、改訂される。
審議は、衆参両院議長、両副議長、総理大臣、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長からなる、皇室経済会議で、行なわれるのである。