2011年08月08日

がんばらなくていい東北 宮城松島被災地の旅 2(代筆・事務局長)


 はじめ、被災地入りは、2泊3日の予定だった。
 しかし7月31日の宿がとれず、8月1日のみ空きがあった。
 現地に食堂があるかもわからなかったので、二食付で予約した。
 
 震災後いち早く営業再開した、「大松荘」である。
 松島海岸駅の目の前にあり、JR仙石線で被災地入りする場合、至便である。
 仙石線松島海岸駅〜矢本駅間は、津波で線路がめくれ、運行できない。

 いまはおよそ一時間に一本、代行バスが出ている。
「大松荘」はそのバス発着所からも、目と鼻の先だった。
 むろん予約するときは、そんな事情はわからない。たまたま電話をかけただけである。一泊二食付きで13.600円は、観光客ではない私には正直高かった。それでも、お金を使うことも復興支援になると思い、迷うことなく決めた。

 さて宿も決まり、あとは行くだけという段になって、永松さんより連絡があり、31日に東名(とうな)で炊き出しがあるという。その時に衣服支援をしてはどうか、ということで、夏物のズボンや、ハンドタオルをバッグ2個分詰めた。

 8月1日。朝8時に事務所を出た。
 くもり空で、それほど暑くはなかった。
 通勤客で満員の東海道線で東京駅に向かう。

 東京駅で東北新幹線に乗り換える。
 ホームでは、停車中の新幹線の周りに、人だかりができていた。
 駅員にきくと、人気のある「はやて・こまち号」だった。
 鉄道マニアが群がっていた。
 全席指定なのであきらめ、隣のホームで、山形の新庄まで行く便の自由席車両に乗り込んだ。仙台出身の友人に、仙台止まりの便より、もっと先まで行く便の方が速いときいていた。

 自由席はがらがらで、三人分の席を一人占めできた。
 一人分のスペースが広く、椅子の背中もその分ながながとリクライニングできる。
 ボタンが二つついていて、Bボタンを押すと、座椅子部分も前の方にスライドする。
 楽ちん至極。

 自由席車両に乗る前に、指定席車両の中が見えたが、かなり席は埋まっていて、きゅうくつそうだった。高い指定席より安い自由席の方がいいとは、盲点である。ひとり、得した気分になって、思い切り身体を伸ばし、終点の仙台まで高いびきをかいた。

 途中、福島に止まった。
 原発事故がいまだ収束しない福島である。
 くもり空であったせいか、どことなく沈うつに見えた。

 横須賀に住んでいる知人の話だ。
 家の近くに、核燃料の倉庫がある関係で、放射能測定器があるという。
 ふだんは、基準値以下の、ゼロ近くを這っている測定線が、震災の後、いきなり急上昇して、上限をふりきってしまった。2日、3日と経つうちに、半分に減り、4分の1に減りしていったが、いまだ震災前の数値にはもどっていない。

 放射能量計の針がふりきれたとき、テレビでは福島の原発建屋が爆発する映像が流れていた。どう考えても、放射能量の急上昇は、その爆発と関係があるとしか思われない。それなのに政府は、人の一年に浴びる放射線量以下の数値だの、X線検査で照射する程度だのと繰り返す。
自分たちも被爆させられたのだ、と彼は思い知った。

 そう、私たち、震災のとき関東にいた人間は、被爆したのである。
 広島・長崎と同じ被爆者になった。
 だからといって、どうという話でもない。
 30才以上の成人は人生を自分で決めるべき、という考えに私は賛同する。
 ただ、乳幼児や、子供たちとなると、話は別である。

 主にヨーロッパから来た在日外国人が、本国からの緊急通知で、あわてて被爆圏外に逃げたのも、今から思えばあながち間違ってはいない。外国の政府やメディアは、日本国民との利害関係が薄いので、ありのままを発表したのだろう。

 もし自分が外国に出ていて、同じ目に遭ったら、もちろん脱出する。
 ただ今回は他でもない、自分の国の領土内でのことだ。
 何が起きても、どこへ脱出する場所もないし、そんな気もない。

 福島のことから横道にそれた。
 旅の先を急ごう。
 仙台に着くと、在来線に乗り換え、松島海岸駅へ向かった。
 地図で見るとよくわかるが、JR仙石線は、今回津波の来た海岸線をずっと石巻までつづいている。松島の海岸線を通っていく。
 松尾芭蕉があまりの美しさに、俳句をつくる気にならなかったというほど、日本で有数の風光明媚な路線なのだが、今回はそれが災いした。松島海岸駅から矢本駅まで、復旧に5年はかかると言われている。また、観光資源でもある、松島の島々が、津波から人々を護った話しも、後にきくことになる。

 仙台の街並みは、震災など何もなかったように、普段と全く変わらない。
 本当に自分は被災地へ向かっているんだろうか。
 キツネにつままれたような気分だった。

 それが、塩釜を過ぎたあたりから、少しずつ津波の爪跡が見えだした。
 窓の外の海ぞいの風景が、じわりじわりと異様さを増してくる。
 いよいよか。肌が粟立つのを感じた。



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