2010年06月15日

神仏は妄想である 274

三密とは一に身密、二に語密、三には心密なり。法仏の三密とは、甚深微細にして等覚十地も見聞するあたはず。故に密といふ。・・・・衆生の三密もまたかくのごとし、故に三密加持と名づく。もし真言行人あつて、この義を観察して、手に印契をなし、口に真言を誦し、心三摩地に住すれば、三密相応じて加持するが故に、早く大悉地を得。
即身成仏義

人が、この法則を、昼夜に精進すれば、生身のままに、五神通を獲得する。更に、修練すれば、この身のままに、仏の位を得る。
私が、現代語訳した。

つまり、修法とは、印契、つまり、指で様々な形をあらわし、真言を唱え、三昧の境地に没入する行為である。
それを、昼夜に精進すれば、法仏の慈悲と、衆生の信心が合致して、肉身のままに、成仏するという。

そりゃあ、昼夜、24時間も、そんなことをやっていると、少し感覚がおかしくなり、仏になったと、思うのも、無理はない。

ここで注目したいのは、空海は造型とともに、言葉・文字を重んじている点である。右の三密のなかの「語密」である。「即身成仏義」と併せて重要なのは「声字実相義」だが、次のような言葉がある。
亀井

如来の説法には必ず文字による。文字の所在は六塵「色・声・香・味・触・法」その体なり。六塵のもとは法仏の三密即ちこれなり。

声字分明にして実相あらはる。

真言とは則ちこれ声なり。声は則ち語密なり。

空海は、語密に、大きな意味を与えている。

漢字漢文は外来語だが、仏教信仰なくしては消化されなかったという点が大切だ。外来語を学ぶことは、語学力だけではなく、根本的には信仰の問題である。その起源を究明してゆくことによって、信仰の起原に直面せざるをえないからである。
亀井

日本に、漢語が入ってきたのは、儒教、道教、そして、仏教経典が多い。確かに、それぞれの、言葉の意味は、信仰に関することであろう。

信仰の起原に直面するという、亀井の言うことは、理解する。

日本風の「言霊」を仏教に求めたとき、空海は「語密」に直面したのである。

日本風の、言霊というが、その言霊に至るまでの、過程は、実に長いものである。
おおよそ、縄文期から、徐々に芽生えていったものである。

更に、伝統というものも、然り。
土人の生活に、文化も、文明もあるわけが無いという、アホがいるが、伝統は、土人生活時代から、培われてきたものである。

自然に、ある、文化形成に向かっていた。
そして、それが、例えば、万葉集に、結実した。
だが、それまでには、気の遠くなる、時間が必要であり、その時間の中で、熟成させ、伝統というものが、出来上がる。

言霊の伝統を、考える場合は、縄文期の、まだ、目覚めの前の、意識から、はじまっていると、考えることが、必要である。

更には、言霊の以前に、音による、文化が出来た。
私は、音霊、おとたま、という。
そして、その音霊の、数である。
私は、それを、数霊、かずたま、という。

象形文字から、文字といわれるまでに、どれだけの、時間を要したか。

象形文字の時代は、文化、文明など、存在しないという、理屈は、成り立たない。

言葉・文字による表現が、人間をいかに困惑せしめ翻弄するかという問題にもむすびついている。神々と人間、仏々と人間、人間と人間との結合とは、この翻弄関係に入ることだ。言語表現のもつ極度の微妙性、その複雑さや曖昧さにもとづくわけだが、人間にとってこれは永久の課題ではなかろうか。
亀井

文芸評論家らしい、疑問である。

空海は「語密」の名のもとに、言語表現の全過程にみられる秘密を凝視したにちがいないのだ。さきの造型とともに、彼の信仰体験が詩的体験であり、逆もそうであった理由はここにある。
亀井

声字分明にして実相あらはる。
空海

声、すなわち、真言、そして、文字が、ある種の過程を通して、実相があらわれる、というのだ。

桐山靖雄氏が、発声法を徹底したという、以前書いたものを、思い出して欲しい。

声に対して、徹底した、繊細にして、敏感なこと。
信仰の最も精妙な機能であり、「秘密荘厳心」の心臓部であると、亀井氏は、言う。

空海の、策略は、よく解った。
決して、事を曖昧にしない。

目に見えるようにする。
更に、耳に聞こえるようにする。

心の内にある、声にとか、文字にとは、言わない。
それが、空海の、マジシャンたる所以である。

手品師は、そこにあるものを、すべて、客に公開する。
そして、有るものが、消滅したり、無かったものが、現れたりするという、サービスをして、客を楽しませる。
そこには、トリックがある。

空海の、トリックは、人の心の、変容であった。
人の心に、あたかも、仏が、同化したかのように、錯覚させるという、高度な、トリックである。



posted by 天山 at 00:00| 神仏は妄想である。第6弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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