2009年08月03日

伝統について 3

何せむに 命は継がむ 吾妹子に 恋ひざる前に 死なましものを

なにせむに いのちはつがむ わぎもこに こひざるまえに しなましものを


どうして、命を永らえようか。吾妹子に、恋して、苦しむ前に、死んでしまおうものを。

あまりに、恋心が強く、激烈ゆえに、恋の成就は、死をも、意味する。
激しい恋の告白である。

命など、永らえようと思わない。恋が成就すれば、それで、死んでもいいのだ。


よしえやし 来まさぬ君を 何せむに 厭はずわれは 恋ひつつ居らむ

よしえやし きまさぬきみを なにせむに いとはずわれは こひつつをらむ

よしえやし
もう、いいわ、どうでも
いらっしゃらない、あなたなのに、どうして嫌わず、私は、恋い続けているのだろうか。


好きで好きで、たまらないから、待つのである。
来ないあなたを、好きだから、いつも待っている。

恋する私の、激しい気持ちを、もてあましているのだが、それさえも、恋のためなのである。


見わたせば 近きわたりを 廻り 今か来ますと 恋ひつつそ居る

みわたせば ちかきわたりを たもとはり いまかきますと こひつつそをる


見渡せば、近い、渡し場だが、回り道をして、今こそ、来るだろうと、恋づけて、待っている。
回り道をして来るだろうと思う。
人に姿を見せないように、密かに、会いに来る。

今か来ます
今か、今かと、待っている。
きっと、遠回りをしてくるのだろう、私の君は。



愛しきやし 誰が障ふるかも 玉ほこの 道見忘れて 君が来まさぬ

はしきやし たがさふるかも たまほこの みちみわすれて きみがきまさぬ


可愛い誰かが、邪魔をしているのだろうか。玉ほこの道を、忘れてしまったのか、あなたの姿が現れない。

愛しきやし
可愛い人が、私への、行く手を邪魔しているために、あの方は、この、いつも来るはずの道を、忘れてしまったのでしょうか。

男が通ってくるのを、待つ。
勿論、こちらから、出掛けてゆくのもいいが、それでも、待つことに、恋の重さがあった。
来てくれると、信じて待つ間に、恋が熟してゆくのである。


恋すれば
苦しきものと
知りつつも
越すに越せない
絹の間合いを  天山




posted by 天山 at 00:00| 伝統について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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