2008年12月04日

もののあわれ344

若宮の御事を、わりなくおぼつかながり聞え給へば、命婦「など、かうしもあながちに宣はすらむ。今おのづから見奉らせ給ひてむ」と聞えながら、思へる気色かたみにただならず。かたはらいたきことなれば、まほにもえ宣はで、源氏「いかならむ世に、人づてならで聞えさせむ」とて、泣い給ふさまぞ心苦しき。

源氏
いかさまに 昔むすべる 契りにて この世にかかる 中のへだてぞ

かかる事こそ心得がたけれ」と宣ふ。命婦も、宮の思ほしたるさまなどを見奉るに、えはしたなうもさし放ちきこえず。

命婦
見ても思ふ 見ぬはたいかに 嘆くらむ こや世の人の まどふてふ闇

あはれに心ゆるびなき御事どもかな」と、しのびて聞えけり。かくのみいひやる方なくて、かへり給ふものから、人のものいひもわづらはしきを、わりなき事に宣はせおぼして、命婦をも、昔おぼいたりしやうにも、うちとけ睦び給はず。人目立つまじう、なだらかにもてなし給ふものから、心づきなしとおぼす時もあるべきを、いとわびしく思ひの外なる心地すべし。




若宮のことを、しつこく見たがるので、命婦は、なぜ、そのようにしっこく、お責めになりますのでしょう。そのうちに、自然に御覧なさいますのにと、申し上げる。
心の中は、命婦も、穏やかではないのである。
表立って言うことの出来ないことであるから、そのまま、言うことも出来ず、源氏は、いつの世になったら、取り次ぎなしに、お話できるのかと、仰り、泣くのである。まことに、辛い。

源氏
前世で、どんな約束をしたために、この世で、このような隔てがあるのだろう。

こんなに、隔てることが、解らないと、仰る。
命婦も、宮の苦しみを知っているので、さらりと断ることはせず

命婦
若宮を見ての、宮も、嘆いていますが、見られない君も、どんなに、お嘆きでしょう。これが、子により、迷う闇でしょう。

まことに、いつまでも、苦しみが絶えない、お二人でございますと、密かに、申し上げる。
源氏は、どうすることも、出来ずに、帰られるが、世間の口は、煩いもので、宮は、つまり藤壷は、それも、困ったことと言うし、また思うのである。
命婦と以前のように、親しくもしない。
人目に立たないように、穏やかに扱うが、命婦の態度を、気に入らないと思う時もあるようで、大変辛く、それをまた、意外にも、思うのである。


なだらかにもてなし給ふものから
穏やかに、扱うのだが

心づきなし
心が、付かない、つまり、無関心、気持が入っていない。

いとわびしく思ひの外なる心地
大変、侘しく、つまり、切なく、思いのほか、つまり、意外に思う。

作者の、藤壺に対する心境の説明である。




四月に内裏へ参り給ふ。程よりは大きにおよずけ給ひて、やうやう起きかへりなどし給ふ。あさましきまで、まぎれ所なき御顔つきを、おぼしよらぬことにしあれば、「またならびなきどちは、げに通ひ給へるにこそは」と思ほしけり。



若宮は、四月に、参内される。
普通の成長よりも、早く、そろそろ起きかえなどする。
呆れるばかり、瓜二つの顔である。
おかみ、主上は、何もご存知ないので、他に類のない美しい者同士、いかにも似ていると、思われた。

つまり、若宮は、源氏と、瓜二つなのである。

主上、おかみは、何も知らないというが、果たして、本当か。
研究家たちは、帝は、それを知ったと、分析する。
物語では、帝は、知らないと、している。

源氏物語の、面白さは、多くの研究家たちの、妄想の、膨らまし方で、如何様にでもなる。
あたかも、作者のように、分析する者もいる。
評論家というのは、コバンザメのように、源氏物語を、生活の糧とするのである。

浅ましいこと、甚だしい。

物語の解釈など、誰が、とのように行ってもいい。
勝手な解釈、勝手な妄想である。

源氏物語に関して書かれた本は、腐るほどある。
この解説を、鵜呑みにして、読んだつもりになる者も、多数。

どんな風にして、読んでよろしい。

これは、歴史的娯楽小説である。
小説は、楽しいか、楽しくないか、である。

好きでない人が、無理やり読んでも、詮無いこと。
楽しく、面白い人が、読めば、それでいい。

また、それを、読んで楽しい時期というものもある。また、楽しくない時期というものもある。誰にも、強制させる必要はない。
受験勉強で、読んだ人は、二度と読みたくないという。当然である。
娯楽小説を、仰々しく、分析して、更に、性格の悪いテストを、受けるのである。二度と、読みたくなくなるのは、当然である。

人間を機械のように扱うのは、奇怪である。
源氏物語に、嫌悪感を、抱かせたのは、学校教育である。



posted by 天山 at 00:00| もののあわれ第9弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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