2007年10月08日

もののあわれについて121

弟の訃報を聞いてから、半年後、天平19年2月、北国の厳寒が、堪えたのか、家持は、病に臥す。
重態に陥った。

忽ちに病に沈み、ほとほとに泉路に臨みむ。よりて歌詞を作りて悲しみの緒を申ぶる歌一首
たちまちにやまいにしずみ ほとほとによみぢにのぞみぬ。
よりてうたをつくりて かなしみのこころをのぶるうたいっしゅ

大君の 任のまにまに 丈夫の 心振り起し あしひきの 山坂越えて 天離る

鄙に下り来 息だにも 未だ休めず 年月も いくらもあらぬに うつせみの

世の人なれば 打ち靡き 床に臥い伏し 痛けくし 日に日に益る たらちねの

母の命の 大船の ゆくらゆくらに 下恋に 何時かも来むと 待たすらむ 心さびしく

はしきよし 妻の命も 明け来れば 門に寄り立ち 衣手を 折り返しつつ

夕されば 床打ち払い ぬばたまの 黒髪敷きて 何時しかと 嘆かすらむぞ 妹も背も

若き子どもは 彼此に 騒ぎ泣くらむ 玉鉾の 道をた遠み 間使も 遣るよしも無し

思ほしき 言伝て遣らず 恋ふるにし 心は燃えぬ たまきはる 命惜しけど 

せむすべの たどきを知らに かくしてや 荒し男すらに 嘆き伏せらむ

以下、ひらがなにするので、声に出して読まれよ。

おおきみの まけのまにまに ますらおの こころふりこし あしひきの やまさかこえて あまさかる ひなにくだりき いきだにも いまだやすめず としつきも いくらもあらぬに うつせみの よのひとなれば うちなびき とこにこいふし いたけくし ひにひにまさる たらちねの ははのみことの おおふねの ゆくらゆくらに したこいに いつかもこむと またすらむ こころさびしく はしきよし つまのみことも あけくれば もんによりたち ころもでを おりかえしつつ ゆうされば とこうちはらい ぬばたまの くろかみしきて いつしかと なげかすらむぞ いももせも わかきこどもは をちこちに さわぎなくらむ たまほこの みちをたとほみ まづかひも やるよしもなし おもほしき ことつてやらず こふるにし こころはもえぬ たまきはる いのちおしけど せむすべの たどきをしらに かくしてや あらしをすらに なげきふせらむ

訳す。

大君の任命を受けて、丈夫たる心を振起し、山坂を越え、都を遠く離れた田舎に下り、一休みも、しないうちに、いくらも月日がたたないのに、うつし世の常として、病に冒された。
床に伏して、苦しさが、日増しに募る。
都の母は、離れて住む私のことが、気がかりで、そわそわと落ち着かなく、いつ帰るのかと、待ち焦がれる、その心が、痛ましい。
愛する妻も、夜が明ければ、門に立ち、着物の袖を打ち返し、夕となれば、床を払い清めて、黒髪を敷き、いつになったら、戻るのかと、寂しい思いをしている。
兄も妹も、幼い子らは、あちこちと、騒いだり、泣いたりしているであろう。
道中が遠いので、使いをやる手立てもない。
心に思うことを、伝えることもできず、恋しさに、心が燃えるばかりである。
命は惜しいが、どうしたらよいのか、術も無い。
こんな有様を、丈夫たる者、いつまでも嘆き伏しているのであろうか。

反歌

世の中は 数無きものか 春花の 散りのまがひに 死ぬべき思へば

よのなかは かずなきものか はるはなの ちりのまがいに しぬべきおもへば

世の中というものは、何と、はかないものであろう。春の花、散り行くように、その、散り行く花に、まぎれて死んでゆくのである。

長歌の方は、緊張感が無い。平らである。
反歌の方は、優美で、優雅であり、まさに、古今に向かう。

ここで、矛盾がある。
長歌の、冒頭は、大君の 任のまにまに 丈夫のと、勇ましいが、反歌は、世の無常観を歌うのである。
先の、勇ましさは、どうしたのか。
それが、礼儀であったと、考える。

古人に習い、大君のと、はじまるが、如何せん、衰弱しているのである。

本音と建前という、対立がある。
勇ましい姿が、建前である。無常観が、本音である。

この辺りから、日本人の礼儀作法の元が、出来た。

大君が建前になっている。
儚さが、本音になる。

それが今にも、受け継がれている。
最も、特徴的な時代は、戦争である。

サイパンのバイザイクリフに行き、慰霊をした。
その崖から、海に飛び込んで死んだ。アメリカ軍に追われてである。
その際、人々は、口々に、天皇陛下万歳と叫んだ。
それが、建前である。
そして、心の内で、愛する人の名を呼んだ。それが、本音である。

特攻隊員も、天皇陛下万歳と言う。建前である。
心の内で、かあさんと、叫んで、敵機に体当たりするのである。

これを、礼儀作法という。

建前の、天皇陛下万歳だけを、見て、天皇制打倒の者は、何をか言う。
愚かである。
礼儀作法であるということなど、少しの注意力があれば、解るのである。

今も昔も、天皇とは、象徴である。
国民の、あらゆる感情を受けてきた。
国民の、あらゆる感情を受けるということ、少しの想像力を持って、考えてみるに、想像を絶する、立場であり、責任であり、私のことなど、考えていられないだろう。

私は、やまと心から、天皇を見るに、見事な、立ち居振る舞いである。
日本で、最も、無私になる人である。

天皇は、支配者では無い。どうして、それに気づかないのか。
天皇は、祈りの人である。国民の祈りの人である。

例えば、現天皇を見る。
その存在感を無くしての、行動である。歴代天皇の中でも、最も、存在感の無い振る舞いである。
2667年の歴史の上にある者としての、自覚であろう。

通常、一般の国民が、私を考える時の、先祖といえば、二代、三代前の先祖が、関の山である。しかし、天皇陛下は、2667年の長さを負う。
天皇にならなければ、天皇の心のさまを、想像できないのである。

この天皇に対する思い、明確にしておかなければ、万葉の時代も、理解できない。
そのようである、ということと、自説は、別物である。
傲慢不遜な者は、それを、一緒くたにしてしまう。

カトリック信者である、長崎市長が、天皇の戦争責任を言うが、ローマ法王の、残虐極まりない、支配の実体を言わない。
天皇の戦争責任など、当たり前のことである。

天皇にならなければ、天皇を理解できないのである。

天皇は、すべての日本の責任を負う。だから、スメラミコトである。
統べる、みこと、御言である。
大和言葉を知らない者が、天皇を云々することは、出来ないのである。
知らないからである。
知らないものを、知るかの如くに言うのは、大嘘である。

昭和天皇は、戦争責任を負うゆえに、生き続けなければならないと、考えた。
自害しても、いいのだ。
しかし、国民のために、天皇として、生きなければならないのだ。

天皇は、鏡である。自分の姿を天皇に写す。ゆえに、戦争責任を問い、天皇の存在を憎む。すべて、それ、我の姿である。
天皇の存在が、戦争を引き起こされたと、短絡的に考えるのである。
実に、愚かである。
そして、天皇制打倒と、天皇を憎む。

それは、すべて、我が身の姿である。

すべての責任を誰かのせいにする。実に、簡単で楽である。
天皇が、それを負うとは、実に、切ないものである。

言挙げせずという、日本の伝統を、天皇は、生きる。
ゆえに、多くを言挙げせずに、淡々として、責務を果たす。

敗戦により、天皇が、戦争責任を負い、絞首刑になったら、どうなったのか。
自説ではない。事実を考えよ。
日本は、日本人の大半は、自害し、そして、国は、立ち行かなくなった。
今、別の人種が住む国になっていた。
そんな、簡単なことが、何故、解らないのか。

人間宣言をした天皇は、全国を行幸した。
現人神と言われ、次は、人間であると言えと、言われて、天皇は、ただ従う。
そして、全国を回り、国民を励ます。

どこに、私があるのか。

天皇は、我が国体であるとの、自覚である。
御言を宣べるものであるとの、意識である。

天皇でない者が、天皇を理解出来ないのである。
天皇は、古代の日本の神の上、カミの姿そのままである。
何度も、書いたので省略する。

日本のカミは、人と人を結び、分配する者であること、その役目を負うのである。

建前が、なければ、味噌も糞も一緒の、混乱した国になる。
万葉時代の、大君は、国民の支えであり、柱であり、核であった。

君が代の、君を、天皇として、解釈したのは、明治の数人である。それをもって、君を天皇とした観念に、それを信じて、君が代云々を言う。
愚かである。
天皇は、大君であり、君とは、呼ばない。

ゆえに、君が世は、恋歌であり、自然発生的に、皆が、様々な形で、歌っていた、民謡歌である。
ちなみに、現在の、君が代の、曲調は、薩摩琵琶の曲である。
君が代は、長歌、清元、常磐津、大和楽、小唄、端唄等々、様々な歌で、歌われていた。

大戦の頃に、出来た、一部の者の、思想に、いつまで、捕らわれ、強迫されているのか。
哀れでならない。

余計なことだが、言う。
現天皇のスケジュールは、分単位ではなく、秒単位である。
通常の人間が、秒単位だと、狂う。
狂わずに、いるということ、奇跡である。
天皇にならなければ、天皇を理解出来ないのである。

私は、右翼であろうか。
私は、事実を言うのみ。
事実を言うことで、色分けされるとしたなら、色分けする人間に色が着いているということである。
ゆめゆめ、私を限定することなかれ。私は、無限定の人間である。



posted by 天山 at 00:00| Comment(0) | もののあわれ第2弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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