2007年10月06日

もののあわれについて119

天平17年、3月、家持は、宮内少輔、くないしょうしょう、に、そして、6月、越中守、えっちゅうのかみ、に、任じられた。

7月、妻を都に残し、単身赴任する。

29歳から、34歳までの、五年間を、越中で過ごす。

家持は、この北国での時期に、全歌数の、約半数を、ここで歌っている。
長歌、47首のうちの、30ほどは、越中吟である。

その、長歌の歌詞の大半が
すめらぎの神の命
高御座天津日嗣とすめろぎの
大君の命かしこみ
大君の遠の朝廷と
大君の敷きます国は

柿本人麿を思うが、父の旅人や、憶良に、多く影響されて、観念化された歌に陥るのである。
つまり、万葉後期の苦悩は、家持の苦悩となった。
それは、生命力、生命感覚の、衰退である。
この、苦悩から、家持は、個人的繊細さを歌う、短歌の方に、重点を置くのである。

その前に、余計なことを言う。

天皇制云々についての、議論は、議論として、日本人としての、天皇に対する思いの、そのままを書く。
大君とは、君をまとめる者。君主を、束ねる存在である。

日本には、皇室というものが、戦後も、そのままにしてある。

この皇室に対する日本人の感覚は、実に、見事である。
国民の総意の、皇室容認は、正に、国民の余裕である。
皇室の存在を、認めているという、心の余裕がある。

天皇に対しては、観念を排しても、容認するものである。
勿論、左翼というのか、左派、社会主義や、共産主義を理想とする者には、邪魔な存在であろう。
しかし、その、社会、共産主義の、行き先は、すべて、独裁政権である。
歴史を見よ。

天皇は、独裁政権を擁立しない。
天皇は、権威として、征夷大将軍等々の、名目で、統治の権利を認めた。国民は、天皇が、認めるものを、受け入れた。
そして、権力にある者も、天皇の存在を、容認し、支配者としてではなく、国民の精神的支柱としての存在感を、認めたのである。
事実を書いている。

天皇には、何の権力も無い。
ただ、無形の権威がある。その、無形の権威を、国民が、余裕として、受け入れる国が、日本である。

大和朝廷設立の頃は、矢張り、軍事としての、権力があったが、それらは、自然消滅してゆく。
国民の心の象徴としての存在感になってゆく。

ここに、日本民族の、たしなみがある。

あるべきように、天子様を戴くのである。
さらに、天子様を、祖先の総称として、認めるという、驚きである。
天皇は、ついに、祖先の総称として、国民に認知される。

日本人には、唯一神というものは、無い。
祖先が、神なるものである。
だから、たしなみ、になるのである。

それを、余裕と言う。
国民の心の余裕の存在が、天皇はじめ、皇室であり、彼らは、謙虚に、その役目を担うのである。
他の国の、王室とは、全く別物である。

本当の権威を身につけた、天皇家という、家柄を、国民が支えるという図は、国家、つまり、共同幻想の、国家の支柱としては、理想である。
理想国家を、日本は、有するのである。

国難や、国が乱れる時、国民は、天皇の声を待つ。
そして、天皇の声に従う。
それは、縄文期の、主、オサに対する感情である。
オサは、食べ物を分配する役目を負う。それは、重責である。
日本の神の語源は、この、分配する者、手、タと、手、タを、つなぐ者としての存在を、カミと呼んだ。
だから、上も、守も、カミと読むのである。
上に立つ者を、カミとして認めた。

何度も言うが、西洋思想の神観念を持って、日本の神の思想を、解釈してはならない。

りんごと、ミカンを、比べることは、出来ないのである。

西洋の王室と、日本の皇室を、比べられないりである。また、その思想でも、比べられないのである。

政治形態としても、日本の物の見方がある。
相違点を見るというのが、哲学の最初であるから、相違点を、見つめて、日本の皇室、天皇の存在を、考えるべきである。

さて、家持は、万葉の歌の最後であり、古今、新古今の最初である。

現代にまで続く、衰退の様を、家持から、推察することが出来る。

生命力の衰退である。

事の様が、解らなくなった時、初めに戻る。日本人の初心は、万葉集である。
そこに、戻ればよい。

天地と一体と、化す、生命感覚に、戻ればよい。

いわ走る 垂水の上の 早蕨の 萌えいずる 春になりにけるかも
志貴皇子
いわ走る水も、早蕨も、私も、共に、春を喜ぶのである。
天地一体として、その生命力を感じ取る心である。

つまり、もののあわれ、である。



posted by 天山 at 00:00| Comment(0) | もののあわれ第2弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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