2007年06月09日

もののあわれについて

貧窮問答歌一首並短歌
まずしきひとのといこたえるうたいっしゅ ならびにたんか

風雑り 雨降る夜の 雨雑り 雪降る夜は すべもなく 寒くあれば 堅塩を 

取りつづしろひ 糟湯酒 うちすすろいて 咳ぶかい 鼻びしびしに しかとあらぬ

鬚かき撫でて 吾を除きて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば 朝衾 引き被り

布肩衣 有りのことごと 服そへども 寒き夜すらを 我よりも 貧しき人の 父母は

飢え寒からむ 妻子どもは 乞ひて泣くらむ この時は いかにしつつか 汝が世は渡る

長い歌なので、前半を解釈する。

堅塩を とりつづしろひ。
かたしおを 
堅塩は、精製していない固形の塩。
つづしろひ
少しつづ食べる。かじる。なめる、という意味。

糠湯酒
酒の糠を湯に溶かしたもの。
貧しいので、酒の変わりに飲んだ。

咳ぶかひ
咳ぶくこと。
こんこんと、咳をする。

鼻びしびしに
寒いので、鼻水をすする。その音を言う。

しかとあらぬ
まばらに生えている鬚のこと。

吾を除きて 人はあらじと
俺をさしおいて、真に、人間といえる、立派な人は、どこにもいないではないか。

朝衾
衾は、夜具のこと。麻で作った夜具。

布肩衣
肩衣は、袖なしで、ちゃんちゃんこ。

有りのことごと 服そへど
そこにあるもの、全部。
服そへ きそへ
重ね着をする。

乞ひて泣くなむ
きる物、食べ物を欲しがり、泣く。

汝が世は渡る
お前は、どんなふうにして、身過ぎ、世過ぎをしているのか。
渡るは、過ごすの意味。

ここまでが、貧しき人の問いである。
風まじりに雨の降る夜、雨交じりに、雪の降る夜。どうしようもなく、寒い。何も無いので、堅塩を、さかなに、かじりながら、熱い湯でといた、酒糟を、うちすすり、咳き込んだり、鼻水をすすり、あるともいえない鬚をかき撫でて、この自分を、差し置いて、ろくな人間は、いないと、誇ってみるものの、何としても、寒いので、麻の夜具を被り、半そでのチャンチャンコまでも、取り出し、着れるものを、残らずに着ても、なお、寒さが身にしみる。しかし、自分よりも、もっと、貧しい人の父母は、ひもじさに、凍える思いをしているだろう。妻や子は、食べ物や着るものを、欲しがり、すすり泣く。こんな時、あなたは、どんなふうにして、世を渡っているのか。

はっきり、言って、実に、見苦しい歌である。
例え、このような貧しさであろうと、言葉にし、口にしない。

憶良は、誇張のし過ぎである。
実際、憶良の収入を調べてみると、それ程の貧しさはない。
要するに、妄想に酔うのである。
憶良の歌は、当時の資料にならない。
あまりに、気分的だかららである。感情的である。
冷静になれないのである。

抑鬱状態の、貧乏恐怖である。
生まれ育ちの、観念から、抜けられないのである。そして、悪いことに、その気分に酔うのである。

悲劇の主人公に酔うとは、あまりに、だらしない。
憶良は、決して、幸福感を感じることが出来ないでいる。つまり、それは、精神的病にあるといえる。

現代も、このような人、多数いる。
不幸病に、かかっている。決して、幸せな状態や、情感を感じ取れないのである。

そういうメガネで、すべてが、見える。悪いことに、そこに、仏教の理屈が、入るから、始末に終えない。

世を儚む、はかなむ、ことなど、健全な精神の人には、無い。
儚いものを、認識するが、それに、その感覚に、翻弄されることない。

当時は、抗欝剤がなかった。
もし、薬があれば、憶良も、救われた。
お勉強のし過ぎで、ノイローゼ、抑鬱神経症になったのである。

憶良の歌を読む時は、突き放して読むべきである。
その歌に酔えば、ただ、沈没するだけである。

ただ、感心することは、この歌を、万葉集に取り入れたということである。
ここに、価値がある。

初期、万葉の歌が、面であれば、これらの歌は、裏である。
面だけでは、化け物になるゆえ、裏の歌も、取り入れた。
選者は、実に、バランスがいい。

次に、後半を読む。



posted by 天山 at 00:00| Comment(0) | もののあわれについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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