2007年02月15日

古今の序を続ける

古今の序を続ける。
「いにしえより、かく伝はるうちにも、奈良の御時よりぞ、広まりにける。かの御世や、歌の心をしろしめしたりけむ。かの御時に、おはき三つの位、柿本人麻呂なむ、歌の聖なりける。これは、君も人も、身を合はせたりといふなるべし。」
古きより伝わるうちに、奈良時代になった平城天皇時から、特に広まったのである。あの時代の帝は、歌の本質をお知りになっていらしたのであろうか。柿本人麻呂は歌の聖であった。このことは、帝も、臣も身をひとつに解け合わせていたのである。

「秋の夕べ、竜田川に流るるもみぢをば、帝の御目には、錦と見たまひ、春の朝、吉野の山の桜は、人麻呂が心には、雲かとのみなむ覚えける。」
秋の夕暮れの竜田川に流れる紅葉の葉は、帝には、錦と見えていた。春の朝の吉野山の桜の花は、人麻呂の心には、雲ではないかと思われるばかりであった。

「また山辺赤人といふ人ありける。歌にあやしく妙なりけり。人麻呂は赤人が上に立たむことかたく、赤人は人麻呂が下に立たむことかたくなむありける。この人々をおきて、またすぐれたる人も、くれ竹のよよに聞こえ、かた糸のよりよりに絶えずぞありける。これより先の歌を集めてなむ、万葉集と名づけられたりける。」
山辺赤人という人がいた。不思議なほどに歌が上手である。この二人を比べると、どちらが上か下かとは言えない。この二人をおいても、他にまた優れた人々も、その世々に知られて、絶えることがなかったのである。人麻呂、赤人より以前の歌を集めて、万葉集とお名づけになったのである。

上記の文は、年代としては、合わない。
人麻呂も、赤人も、奈良ではなく、もっと古い時代の人であり、二人は同じ時期の人ではない。また、彼らの歌は、万葉集に入っている。
万葉集は、八世紀の頃、大伴家持によって編纂された。
当時の万葉集に対する認識を伺うことが出来る文である。まだ、正確ではなかった。
古今は、十世紀905年編纂であり、万葉集編纂から146年ほど後である。
ともあれ、古今の編纂は、万葉集に大きく影響されたということである。
万葉集は、四千五百首であり、古今は千百あまりと、ほぼ四分の一である。万葉集の圧倒的な量には叶わない。

その後、13世紀1205年に新古今集が編纂されるが、これも万葉集を無視出来ないのである。つまり、万葉集は、矢張り、歌の道の親であった。
万葉に始まり、万葉に帰る。和歌は、そうして大和言葉を伝承してゆくのである。
歌道とは和歌のことであり、この歌道こそ、日本人の心を創るのである。
おしなべて 物を思わぬ 人にさえ 心をつくる 秋の初風 西行
普段は、物思いに耽らない人にさえも、秋の初風は、何事か、物思いに浸らせる力がある。
日本人が心を創るのは、自然の有り様の中にある。それが歌になる。つまり、言葉の世界を作る。精神としての言葉が先ではない。まず心が先であり、そして精神としての言葉の世界が生み出される。
間違いの無いように言う。
ここが、欧米の思想、多弁なインド哲学等々と違うのである。
彼らは、語る、多く語る。語りすぎる程語りつくしても、和歌の前には、吹き飛ぶのである。それは、彼らの言葉が、記号であり、霊の存在しない、物であるからだ。
大和言葉は、霊が宿る、神が宿る言霊の言葉である。もっと言えば、音霊、そして数霊が宿るのである。
三十一音のみで、どこまでも世界を広げてゆくことが出来る。
これを驚嘆しないで、何を驚嘆するのか。

禅宗という仏教の一派がある。中国禅といってもいい。彼らの言い分は、不立文字という、つまり、教えは、言葉に出来ないと言う。しかし、彼らの著述の多いことといったらない。勿論、日本の禅宗の僧も、語る語る。だから、私は嘘だと言うのである。
言葉に出来ないのであれば、語らずに行為のみに始終するはずであるが、語る。つまり、嘘があるからである。語れば、その嘘を隠せると思う。それを、彼ら自身が知らないという不幸である。
短文により、何事か、解ったような言葉を作るのを善しとするようだが、あれらは嘘である。いい格好しいである。
あれに、迷ってはならない。
あれこそ、仏法に迷う骨頂である。勿論、それも彼らは知らない。
一時期の武士たちが、あの言葉の世界に迷い、禅は深遠なものであると、思い込んでしまった。信じ込んだ。それが命取りになった。
これ以上は言わないでおく。
私は、道元の文に大いに触発された。読ませるに見事な文である。
文学としては、素晴らしい。



posted by 天山 at 00:00| Comment(0) | もののあわれについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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