2007年02月11日

大和言葉による和歌や俳句

大和言葉による和歌や俳句が祈りであると言うと、今まで捉えてきた祈りという感覚が変わる。祈りという観念が変わる。
宣ることが、すなちわ、即座に事を動かすという考え方は、日本独自のものである。
ここで、祈りの観念を変えてもらいたい。
すべての宗教の、祈りは、神や仏という、人間を超越したものに向かう。そこに、神や仏に伝達するという意識がある。実は、大和言葉は、それを嫌い「言さえぐ」要するに、喧しい行為とみなす。
伝達する必要無し。言葉にすることが、すなわち、成ることであり、すでに言霊の神によって、完成したのである。
それ以外は、言挙げせず、という。多くを語らないのである。
国際社会で、それが通る、通らないの問題ではない。別の話である。日本人の感性は、そういうものである。共通の言葉、大和言葉をしようしている者には、それで善いのだ。
その分、特別な芸術芸能が発展した。言葉を介さないものである。
言葉を、より昇華させる、いけばな、茶の湯、書の道、陶芸、様々な手芸である。
空白を重んじる墨絵などは、端的に日本の心情を表す。描かれないものにある、真実て゜ある。
葦原の 水穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 然れども 言挙ぞする 言幸く(ことさきく) まさきくませと つつみなく さきくいまさば 荒そ浪 ありても見むと 百重波(ももえなみ) 千重浪(ちえなみ)に敷き 言挙げす吾は 言上げす吾は
豊葦原の水穂の国は、神ながらにあり、言挙げしない国ですが、善き言葉の霊力の幸によって、ご安泰であれと、強く言上げします。この言葉の霊威で、あなたが何の鎖障りもなく無事であれば、また必ずお会いできると信じています。幾重にも寄せては返す波のように、繰り返し、言挙げします。言挙げします。
作者不明のこの歌を、私は驚嘆を持って、読む。
言挙げせぬ国であり、それは、言幸はへる国であるという感性を、皆有していたということである。
言幸く、ことさきく国、うまし国、である。

言幸くゆえに、言挙げせぬという。言葉に幸多いゆえに、多くを語らずともよいという考え方を、古代の人々は、広く持っていた。この万葉集の歌、それ以前からの、言葉に対する日本人の感性をつたえるものである。
そして、最も驚くべきことは、読み人知らずであって、編纂されるということである。
つまり、歌の世界では、身分は無い。歌の世界では、皆、平等であるということだ。
上は天皇から、下は農民までに至り、どうどうと同じ扱いになっているという驚きである。
和歌の前には、皆、平等であるという考え方を驚嘆する。
日本の古代も、他国と同じように、甚だしく身分制度があった。豪族でも、農民は口もきけないという状態である。ましてや天皇を拝することも出来ない。しかし、歌になれば、同じ場所にいるという、驚嘆である。
言葉が、身分を超えていた。
言霊の力を皆々、有していた。
世界史の中でも、人間が平等であるということを宣言したのは、1789年のフランスの人権宣言の、法の前に平等であるというものである。
仏陀は、2500年前に、カーストの国で、高らかに、人間の平等を唱えた。しかし、それが行き渡ることは、なかった。
言霊の前に平等であるということはを、万葉集編纂以前に、有していた。それは長い長い期間のことである。そうでなければ、突然、万葉集編纂から行われたと、考えることは出来ない。

日本人は、存在の根源を神よりのものと捉える。
存在は、コトである。それは事であり、言である。
神は、ミコトである。御言である。みことを、命と書く。
言葉は鳴るものであるから、成るものと捉える。これ、日本人の真骨頂である。
ついでに言っておくが、日本人の神意識は、神として在るものへの、尊称としての神である。言葉も神であるから、尊称して御言(みとこば)と言う。
ここれを誤った宗教学者たちの罪は重い。
欧米の宗教観を持って、日本の神を語ることはできない。
つまり、神という対立概念を日本人は、持たない。対立するものではなく、神は、生活に浸透している力なのである。
決して、オルテガが書く「我と汝」というような言葉遣いにならない。
和歌の世界では、我を省略して歌うものが大半である。
相手が主体になる。我が主体にならない。
だから、君が代になる。まず、相手が先にくるのである。つまり言葉を発しているのは我だから、我を言う必要がないのである。
欧米風に言えば、汝しか無い。
言葉に対する感性が、全く違うこということを、再確認して、欲しいと願う。

大和言葉の認識が深まれば深まる程、日本を愛するという気持ちがこみ上げてくる。
知らないものは無いものである。しかし、知らないからといって無いものと断定することは出来ない。それを総称して謙虚と言う。
これを教える者が少ないことを憂うのである。




posted by 天山 at 00:00| Comment(0) | もののあわれについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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