2016年04月21日

玉砕118

硫黄島は、東京からサイパンの中ほどに位置し、それぞれ、約1200キロの距離を隔てた、小笠原諸島の中核をなす島である。

米軍側から見れば、日本本土空襲に向かう、中継基地として、また、マリアナからの、長距離爆撃機B29の不時着地として、絶好の島であった。

この島が、米軍の手に落ちるとは、東京をはじめ、東部の都市、および工業生産地帯が、頻繁に、米機の空襲にさらされることになる。

硫黄島を守備する小笠原兵団の前身である、第百九師団の編制は、マリアナ沖海戦、当時の、「あ」号作戦前の、昭和19年1944年、5月22日に、さかのぼる。

第百九師団は、小笠原所在の父島要塞守備隊、要塞歩兵隊などを基幹として、編制されていた。

師団長は、栗林忠道中将である。
開戦時は、第二十三軍参謀長として、香港攻略に参加した。
昭和初年、米国およびカナダに、公使館つき武官として、駐在した経験もある。

栗林中将は、着任後、あとから追及した、第百九師団の兵員を加えて、陣地の構築を推進した。

「あ」号作戦発動後は、飛行場の整備や、空と海に対する警戒などに、人員を割かなければならなくなったが、それでも、陣地構築を休むことはなかった。

ただ、「あ」号作戦の余波は免れず、特に先の八幡部隊が進出してきたからは、敵襲の可能性が、増大した。

昭和19年6月24日、空母四隻からなる、機動部隊から発進した、敵機郡が来襲した。

艦載機、約60機が、午前7時過ぎに上空に達し、八幡部隊の戦闘機59機が、邀撃のために、飛び上がった。
結果、相当数の米機を撃墜したが、相討ちの形で、八幡部隊も、24機を失った。

6月15日以来、米軍の上陸を許したサイパン島が陥落する直前の、7月3日から4日にかけて、米機動部隊は、再び、小笠原方面を空襲し、硫黄島に艦砲射撃を浴びせた。

二日間で、八幡部隊は、早くも、壊滅状態に陥ったとされる。

この攻撃により、それまでに栗林中将に芽生えていた、水際撃墜作戦に対する、疑問が、益々確定的なものとなった。

栗林の敵上陸に対する、防御の考えは、水際を偽陣地とし、主陣地は、あくまで、後方に整備するという、考え方が、急速に固まった。

激戦地、硫黄島の玉砕である。

硫黄島の将兵にとり、サイパンが陥落した後は、敵がいつ上陸するか分からないという、焦燥感があった。そして、レイテ決戦がはじまり、ほっと一息ついたというのが、実情である。

当時の大本営では、米側の進攻コースについて、四通りを考えていた。
イ フィリピン~沖縄~九州南部~東京
ロ フィリピン~朝鮮南部~北九州~東京
ハ フィリピン~東京
ニ フィリピン~小笠原~東京
である。

その中でも、イとロの可能性が高いと考えられていた。

フィリピン攻略の後、米軍が一挙に日本本土に手をかけてくる見込みは、絶無とはいえないが、極めて少ない。
本土前縁の作業、それは、本土に上陸する前に、一段、場合によっては、二段の基地占領を、行う。

10月下旬頃は、米軍は、フィリピンから、沖縄を経て、本土に向かうことがあるということ。つまり、硫黄島は、黙殺するのではないかという、推測である。

11月に入ると、レイテ決戦の望みを失いつつあった。
その間、硫黄島の、小笠原兵団は、絶え間ない米機の空襲に悩まされつつ、陣地構築に全精力をかけていた。

地下に潜伏する、守備隊陣地である。
その内容については、省略する。

12月に入り、戦争開始三年目に当たる、12月8日から、14日にわたる約一週間、述べ192機が、来襲し、米側の記録によると、約800トンに達する爆弾を投下したという。

そして、11月30日、米軍輸送船団約80隻が、スリガオ海峡を通り、12月15日、ミンドロ島に上陸を開始した。

大本営は、12月25日、全情勢、米軍のミンドロ島基地獲得による、新情勢と、その西太平洋方面における兵力の余裕にかんがみ、米軍の次期進攻に関して、一月下旬、硫黄島および父島上陸の算大なりと、ほぼ正確な見通しを報じた。

簡単に説明すれば、米軍が上陸する、昭和20年1月までに、地下坑道は、居住区で、12,9キロ、交通路3,2キロ、陣地1キロ、貯蔵庫1キロ、総延長距離で、約18キロを連結する、地下交通路は、二月上旬までに計画の、五分の二を、それぞれ完成させた。

この坑道作業は、言語に絶する重労働であった。
島特有の地熱のため、土中の温度は、常に摂氏49度に達し、同じ人間が5分から7分作業を続けるのが、やっとだった。

五名一組で掘るのだが、24時間で一メートル掘り進むのが、精一杯だった。

そして、また、食糧、飲み水なども不足し、パラチフス、下痢、栄養失調患者が多発して、作業は、思うままに進まないという、状況である。

戦闘も、さながら、この作業も、兵士たちを苦しめたと言える。



posted by 天山 at 06:39| 玉砕3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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