2016年04月20日

玉砕117

今までの状況を少し、まとめると、
マリアナを失い、絶対国防圏の最も重要な、一角に破綻をきたした大本営は、その防衛網を、一段と縮小して、フィリピン、台湾、南西諸島、本土、千島にわたるラインを想定して、それらの地域のいずかに、敵が来攻してきても、随時陸海軍の戦力を結集して、迎撃するという、構想を立てた。
それを総称して、捷号作戦と呼ぶ。

昭和19年9月半ば、米軍は、ぺリリュー、モロタイ、アンガウル島に上陸して、その飛行場を占領し、フィリピン上陸の戦略態勢を、構成した。

大本営は、先の新防衛線上の地域の中で、フィリピンを第一号に擬し、次の米軍の進攻地は、ここだと、予想していた。

ミンダナオ、レイテ、ネグロス島など、中南部の防衛を、強固にすべく、同方面にあった、大十四軍に昇格させ、新たに、第三十五軍を編成した。

大本営海軍部も、戦艦大和、武蔵を擁する第二艦隊を、原油地帯のスマトラ島リンガ泊地で訓練させ、アリューシャン方面から呼び戻した、第五艦隊、および、空母部隊の第三艦隊を、内地に待機させていた。

日本軍は、開戦以来、はじめて、空と海だけではなく、地上軍をもあわせて、立体的な戦争展開を意図し、大本営は、昭和19年8月19日の、御前会議決定の、今後採るべき戦争指導の大綱に基づき、「捷」号作戦に、国運を賭けた。

9月15日、第十四方面司令官、黒田中将を更迭し、山下泰文大将に替えた。

当時、満州にあった、山下大将が、マニラに着任したのが、10月8日である。
その9日後、マッカーサーの大軍が、レイテに殺到する。

レイテ島を守備するのは、第十六師団であったが、当初から、水際死守の作戦は放棄していたため、米軍の上陸は、簡単に許した。

米軍は、日没までに、兵員約六万、物資約、一万トンの揚陸を終わり、第十軍団は、タクロバン飛行場を占領した。

ここから、レイテの悲劇が始まる。

さて、ここから、日本軍が、あらかじめ描いていた、シナリオ通りの展開である。
そして、「捷」号作戦の真髄である、陸海空が、三位一体となって、攻撃が開始されるはずだった。

大本営陸軍部は、この時点で、なお重大な戦術転換を行う。
それは、台湾沖航空戦における、海軍の幻の大戦果報告を、鵜呑みにした結果といえる。

陸軍部は、この際、従来のルソン島戦案を、レイテ湾における、決戦に切り替え、一挙に米大軍を、撃滅すべきだと、主張した。
この案に、もともと、フィリピン作戦の早期決戦を唱えていた、南方軍が、飛びついた。

だが、山下大将は、しかるべき準備も対策も不十分な、レイテにおける決戦は、成功の見込みなしと、反対した。
だが、大本営と、南方軍に負けた形で、妥協する。

勇み立った南方軍は、驕敵撃滅の神機到来せり、と、下令し、第一師団、第二十六師団、独立混成第六十八師団を、レイテに増派することにしたのである。

大本営陸軍部が、決戦場を変更したのは、海軍の台湾沖航空戦の戦果報告を信じたことにある。しかし、その根本にあったのは、連合艦隊の命令を遵守して、栗田艦隊が、レイテ湾に突入すれば、陸海空の三位一体の攻撃が出来、上陸した米軍を粉砕できるという、願望だった。

大西瀧治朗一航艦長が、統率外道と承知しながら、神風特攻隊を編制したのも、栗田艦隊の突入を、ひたすら援護するという、一念からだった。

その頼みの栗田艦隊が、レイテに近づき、痛恨の反転をするのである。

こうして、レイテの決戦は、陸軍の地上作戦に一任された形となる。

しかし、フィリピン沖海戦の終了後、レイテをめぐる戦闘は、たちまち決戦の性格を失ったのである。

つまり、レイテ戦も、玉砕である。

昭和19年10月から、二ヵ月後、米軍は、レイテから、戦場の舞台を、ミンドロ島に移してきた。
ミンドロ島は、ルソン島の南のある小さな島である。

12月15日、米軍が、ミンドロ島に上陸する。
それは、フィリピン諸島の主要島、ルソン島攻略のための、布石であった。

ここにおいて、山下第十四方面軍司令官は、12月19日、第三十五軍司令官鈴木宗作中将に対し、自今、中南部比島において永久抗戦を継続し、国軍将来において反抗のしとうたるべし・・・
と、以後の自給自足の戦いを命じ、事実上、レイテ戦の終了を通告した。

どこかで、歯車が狂ってしまった、戦争である。
開戦三ヶ月の間に、勝ち戦を続けていた日本軍である。

米軍の物量に圧倒的に、負けたのである。

戦争を始めたら、勝たなければならない。
勝たない戦争は、しない方がいい。

戦争をせずに、勝つことを、考える。
実に、大東亜戦争は、それを考えさせられるのである。

だが、まだ、玉砕は、続く。



posted by 天山 at 05:33| 玉砕3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。