2015年06月15日

玉砕37

ダンピールの悲劇を書く前に、ガダルカナル島での、玉砕を生き延びた、兵士たちの、証言をランダムに書いて見る。

ガダルカナルを生き抜いた兵士たち・・・
そこからの、抜粋である。

昭和17年11月15日の夜のことである。
ガダルカナル戦たけなわの頃であった。

ある陸軍上等兵の妻が、夢を見た。
原野が広がる。目の前に防波堤が現れてきた。
ふっと見ると、その防波堤の上を、五歳になったばかりの長男を背負った夫が、歩いている。白衣に戦闘服姿である。
ややうつむき加減に、とぼとぼと歩いている。それでいて、こちらには目もくれない。
「どこに行くの」
「どこに行くのですか」
声をかけようとするのだが、どうしたことか、その声が出ないのだ。
「何度も何度も、大声を出そうとするのですが、ダメでした」
夫の姿がふっと消えた時、目覚めている。
翌朝、養父母が「わたしたちも見た。同じ夢だ」という。
そこへ、夫の親友だった知人が飛んできた。そして、絶句している。
四人が、四人共に、同じ夜に同じ夢を見ていた。

夫の船舶砲兵第二連隊・陸軍上等兵の戦死を知らせる公報が届いたのは、それから、間もなくのことである。
戦死の日は、妻が夢を見た、その日だった。

このような話しは、数多くある。
そして、それを否定する何物もない。
知らせ、である。

肉親の情が、知らせるのである。
人間とは、悲しいものである。

さて、第三十八師団工兵第三十八連隊第一中隊、高須義一陸軍軍曹は、激戦続くガ島903高地のジャングルで苦しんでいた。
下痢が酷く、全身の衰弱が激しい。戦友たちも、下痢とマラリアのため、動ける者は数少ない。このため、高須は、水汲み役を引き受けていたが、200メートルほど先にある川辺まで往復して、半日もかかるという有様だった。

そんなある夜、夢を見た。
「水の夢でした。自分たちが寝ている場所から、少し上に登ったところに水があるよ、と、誰かが熱心に囁いているのです」
夢に見た場所は、とうに昔調べている。
だが、ひょっとしたらと、翌朝になり、半信半疑のままに出かけた。

矢張り、ダメだと、諦めて戻ろうとした。と、足元の落葉から水が染みているのに、気づいた。良く見ると、上のガケのようなところから、ぽつりぽつりと、水が落ちてきている。
「夢に出て来た水は、このことか」
時間はかかったが、両手にたまった水は、意外に透き通っている。口に含んだが、別に害があるように思えない。
水量は少ないが、それで、一日飯ごうに二杯分は取れた。
それから、川に行く必要はなくなり、次第に、体力もついてきた。

同じ頃、名古屋に住んでいた高須の両親は、ガ島で水に苦しむ息子の夢を見ていた。このため、毎朝、近くの観音様にお水をあげて、熱心に御参りをしていたという。

現地で苦しむ兵士たち・・・
それを案ずる、人たちの話しを書いた。

人間には、知られていない能力があると、私は言う。
その篤い思いが、通ずることがある。
その証明である。

私は、戦没者の追悼慰霊をする。
慰霊師である。

このような、話もある。
昭和17年8月20日深夜のことである。
北海道、旭川にある、第七師団兵営の、営門に完全武装の将兵の一隊が入って来た。
下半身ずぶ濡れ、血と泥にまみれた服装ながら、それでも整然と隊列を組み、がっ、がっ、と、軍靴の足音が高い。

事前に何の連絡も受けていない衛兵司令は、兎も角、控えの衛兵六名に、出迎えの執銃整列を命ずる一方、当直将校に報告している。

約30名の一隊は、営内の歩兵第二十八連隊の兵舎に向かい、無言のまま、せめぎ合うようにして中に入り、消えている。

兵舎は、ガダルカナル飛行奪回作戦の第一陣として、派遣されている第二十八連隊の者たちだった。

帰ってきたのは、まさに、その連隊の将兵たちだった。

その他にも、多々不思議な話がある。

そして、その異変が見られた、その時刻、遠いガ島では、第二十八連隊の一木大差指揮する兵士が、米軍の飛行基地に突入し、916名のうち、840名が戦死していたのである。

全滅、玉砕である。

私は、旅日記に、多く戦記からの、引用をしてきたが・・・
このようなものを、紹介したことはない。

霊とは、思いであり、念である。
思い、念を否定する人は、いないだろう。
霊の存在の有無について、言うのではない。

敗戦から70年を経ても、兵士たちの、思い、念は、確実に存在している。
つまり、兵士の霊が、存在しているということだ。

その思い、念を、慰める。それが、慰霊である。
不思議なことではない。
当然のことである。

そして、真っ当に、慰霊をして、大戦の悲劇、玉砕を知るべきである。
玉砕とは、全滅、壊滅の、美称である。
玉とは、霊のことである。
つまり、玉が、砕けたのである。

国のために、玉砕をした兵士の死を悼む。
追悼である。





posted by 天山 at 05:02| 玉砕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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