2014年11月08日

国を愛して何が悪い162

実に、面白いことは、大仏建立に当り、続紀では、宇佐八幡の託宣があり、天神地祇を率いて、必ず大仏を完成させよと告げたという、記事がある。

ただ、後に、これが八幡の禰宜尼の詐術とわかり、島流しにあっている。

ここには、神仏混合の芽生えを感じるのである。

これほど仏教が興隆し、「仏教国家」まで出現した以上、神々は衰退したか、或いは否定されはじめたのではないかと一応は考えられるが、その伝統は依然として強かったようである。そうかと言って、仏教へ抵抗を示した形跡はない。
亀井

矢張り、どう考えても、神道、神ながら、というのは、伝統と言うより他に無いのである。
宗教というより、伝統なのである。

これに関して、亀井は、
いかなる体系ももたず、また外来思想にきわだった対決もしないことはすでに述べたが、そういうかたちで、根強く生き延びて行く独特のエネルギーがあるようだ。
と、言う。

神ながら・・・
それは、日本人の心象風景なのである。
もののあはれ、という言葉も、一つの心象風景であるように。

あらゆるものに密着しながら、そこで活躍を始める原始の産霊と言っていいかもしれない。対決の時間でなく、混沌の時間―――むしろ無時間というものがあって、どこへでも入りこみ、無原則に偏在しながらしかも生産を促がすもの、その神秘感を、古代人はつよく抱きつづけたようだ。
亀井

神仏に関して、考えることはしたが・・・
そこで、徹底したものは、全く無いのである。
徹底したものが無いということと、思想が無いということは違う。

体系化しない、思想というもの・・・
そのように、言ってもよい。
体系化しない思想は無いとは、西欧の観念である。

さて、仏教に関する、歌の類が無いと言うが、一つある。
仏足石歌である。

それは、唐の貞観年間、天竺に旅した人が、仏足の図を写し取り、長安の善光寺に置いた。
たまたま入唐した、我黄書本実が、これを石に刻み、平城右京四条に安置したという。

天平勝宝年間に至り、文屋真人智努、ぶんやのまひとちぬ、という人が、亡くなった夫人供養のために、その石を写し、現在の薬師寺に残る、仏足石だといわれる。

そこに、仏跡を恭ふ、歌十七首と、生死を・・・の歌四首が、仏足石の碑に刻まれている。

それを見る。
御足跡作る 石のひびきは 天に到り 地さへゆすれ 父母がために 諸人のために

みあとつくる いしのひびきは あめにいたり つちさへゆすれ ちちははがために もろびとのために

五・七・五・七・七・七、である。

短歌に、七文字を加えたものである。

この御足跡 八万光を 放ち出だし 諸々の救ひ 済したまはな 救ひたまはな

このみあと やよろづひかりを はなちいだし もろもろの救ひ わたしたまはな すくひたまはな

如何なるや 人に坐せか 石の上を 土と踏みなし 足跡残けるらむ 貴くもあるか

いかなるや ひとにいませか いしのへを つちとふみなし あとのけるらむ とうとくもあるか

生死を・・・
人の身は 得がたくあれば 法の為め 因縁となれり 努めもろもろ 進めもろもろ

ひとのみは えがたくあれば のりのため よすがとなれり つとめもろもろ すすめもろもろ

四つの蛇 五つの鬼の 集まれる 穢き身をば 厭ひ捨つべし 離れ捨つべし

よつのへび いつつのものの あつまれる きたなきみをば いとひすつべし はなれすつべし

これは、やまと言葉である。
このようにして、やまと言葉で、歌う仏教歌の先駆けとなるものだ。

文学的作為無く、淡々として、素朴で、敬虔な思いに満ちている。
これらは、唱和されたらしい。

後の世の、御詠歌の元であるような・・・

ここから、察するところ、仏の教えというものは、貴いものであり、この世、この身は、穢いものであるとの、意識である。

これは、今までになかった、感覚である。
仏教の観念が、少し現れてきた様子だ。

この世を、厭うという気持ちは、新しい感覚である。
良し悪しを別にして、確かに、仏教の教えが徐々に、浸透してきていることが、伺える。

いずれ、それが、無常観へと流れて行く。
それが、平安期には、頂点に達する。

憂いを帯びてきたということだ。
果たして、それは、よいことなのか・・・
解らない。
ただ、精神史としては、見逃せないものである。

人の心の裏を見た。
私には、そのように考えるしかない。
人間が成長して、孤独を感じるようになる、年頃という時期がある。

古代人も、いよいよ、人間の心の憂いを感じる様子である。

清く、明るく、素直で・・・
そんな大らかさに、陰が差し始めた時代である。

仏教、受容の一つとして、とても基調な歌だと思う。



posted by 天山 at 07:19| 国を愛して何が悪い3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。