2014年11月05日

国を愛して何が悪い。159

仏教信仰そのものが歌の対象にならなかったように、実際政治も万葉びとは歌わなかったようだ。
亀井

政治の観念が、今日とは異質のものであり、もし歌うとすれば「すめらみこともち」の「まつりごと」への寿詞よごと的形態をとる。つまり言霊美の方へ変化してしまう。それだけに、その背後に秘められたものがあった筈だ。
亀井

それが、天平がもたらした、政治の空虚感ということになるようだ。

八世紀は、政治面から言えば、藤原家と僧侶の陰謀の歴史である。しかも七世紀のそれと比べると陰性だ。律令国家は整備され、華やかな儀式や遊宴の行なわれた反面に、人々は次第に空虚感を味わったのではなかろうか。少なくとも旅人、憶良以後の歌に、七世紀にはみられない憂いが宿っているように思われる。
亀井

これは、大伴家持について紹介する際に、十分見つめてみたいところである。

亀井は、こういう場合に、辛い思いをしたのは、宮廷歌人たちだと言う。

それは、身分が低くても、天皇讃歌などの歌を作らなければならない。
そのとき、政治の暗さ、葛藤を意識し、空虚感を抱いたら、どうするのか・・・

七世紀より、安定した政治であるが、しかし、陰謀渦巻く時代である。
それは、支配者の中に存在する。
天皇の政治ではない。
天皇に、まつわる人たちの政治である。

当然、様々な、陰謀があるだろう。
ここで、僧侶も混じるということが、肝心である。
一体、僧侶たちは、何をしていたのか・・・

政治の中に入り込むという、状態である。
それは、一般の大衆には、見えない世界である。
しかし、その政治の様を見ていた人々もいる。

藤原氏は、大化改新で、活躍した、中臣鎌足の子孫である。
更に、遡れば、天皇家に仕える高い身分でもある。

神話の時代から、存在していた家柄だ。

藤原不比等以来の藤原家の政策をみると、天武の思い出を打ち消すように仕向けたのではないかと疑われる。天武の皇孫長屋王の死によって、とどめを刺したとも言える。そういう政治的背景も考慮する必要があろう。
亀井

ここでは、それらの歌を取り上げないでおく。

歌を取り上げて、説明を始めると、終わらなくなる。

要するに、歌の調べが、変化してゆくのである。
特に、万葉の長歌である。

それは、初期万葉の歌とは違う、弱さである。
その弱さを、繊細として、評価してもいいが。

文化的には、大量の漢文の書物が、溢れた。
それは、知識欲を充たすものであり、更に、自我の強烈な目覚めを促がすものとなった。

八世紀の人たちは、この自我と、政治の安定に対して、一種の虚無感を抱いた。
政治の安定は、その陰謀を見ずに、ただ、事象だけを見れば、の話である。

ただし、天平時代、聖武天皇の時代には、東大寺をはじめ、全国68ヶ所にわたる、国分寺の建立がある。

亀井は、古代史における、空前絶後の最大のエネルギーをかけたと言われる行為である。

八世紀は巨大建築の時代と呼んでもいいほどだ。それは一体何を意味したのか。いまふりかえってみると異常である。
亀井

確かに、異常なエネルギーを掛けて、建造物が造られている。

あたかも国土そのものが極彩色の蜃気楼のように浮かんでくる。まさに空前絶後の大事業にちがいないが、空前絶後の大浪費であったようにも思われる。
亀井

だが、それは、仏教の第一義ではない。
天武時代は、国家仏教として、だが、聖武天皇になると、仏教国家の形相となるのである。

更に、僧侶というものの、特殊な階級が膨張する。
更に、政治の中にも介入する。

これは、僧侶の堕落である。

つまり、天平の仏教とは、宗教の名に値しないのである。
それは、大陸から伝来した、大乗という仏教の故か否か。

簡単に言えば、日本仏教には、行という、仏教としては、最も大切なものが、欠落していた。
後に、空海によって、行らしきものが、行なわれるが・・・

それは、大陸、中国仏教のせいもある。
その仏教は、単なる、論としての仏教であった。
良く言えば、哲学、思想としての、仏教である。

一体、当時の僧侶は何を持って、僧侶となしたのか、それが、疑問だ。

私は寺院建立を決して否定しないが、もし国家的規模のもとに国分寺を建てるならば、そこに一つの条件が考えられなければならなかった筈だ。第一義の道に発した仏教の実践面を、いかに具体化するかという問題である。一切衆生の教化と救済を目的とするかぎり、その実践面とは、国分寺の場合は、何よりもまず四箇院の充実でなければならないということである。
亀井

それは、貧窮の人々に薬を施す所、施薬院、貧者や身寄りのない人々の病気を治す所、療病院、飢えた人々に食糧を与える所、悲田院、修行し思索する所、すなわち金堂と同じ、敬田院、である。

だが、そういう形跡は、見られないのだ。



posted by 天山 at 06:28| 国を愛して何が悪い3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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