2014年09月29日

国を愛して何が悪い155

さて、仏教伝来の様子を眺めてきたが・・・
まだ、足りないのである。

ところで、大化改新とともに、次のような問題が発生した。氏族制度の弊害を打破し、人民を治め、国家を強固に統一してゆくときの精神的基軸を、どこに求むべきかという問題である。
亀井

その大化改新の詔の発せられる前に、孝徳天皇の注目すべき治世方針の詔がある。

時の、左大臣と右大臣の二人に対するものである。

その中で、
まづ神祇を祭ひ鎮めて、然して後に政事を議るべし。
である。

これは、右大臣蘇我石川麿の、奏上である。

もし、これを徹して行くならば、精神的基軸として、「神ながら」を第一義とすべき、ということになる。

しかし、それ以後も、仏教を排斥するようなことは、全く行なわれてないのである。

逆に、寺院と、僧尼に対する、国家的保護が始まっている。

壬申の乱の大本は、氏族制度の打破を眼目とした、改革であった。
そこに、天智天皇と天武天皇の、やり方の違いと、行き違いがあった。
これに関しては、省略する。

さて、亀井は、その中では、一種の宗教改革を迫られたとみてよい、との記述である。
だが、そのようなことは、起きなかったのである。

「神ながら」と仏教は併行したまますすんでゆくが、天武朝になってから、精神的基軸を、いずれかの仏典に求めようとする要求があらわれてくる。これは注目すべき現象と言ってよい。各氏寺の統制と、各国府に仏像安置を命じたことから、その必要を迫られたとみるべきであろう。選ばれたのは金光明経であった。
亀井

つまり、「神ながら」は、書き物がなく、指針としても、表すことが出来ないのである。仏典は、すでにその姿を持って、表れている。

天武朝五年から、聖武天皇の神亀五年まで、半世紀、金光明経が、年月を経るに従い、重要視されていったのである。

それは、
中央集権化を、内的に支える経典として、適切とみなされたからである。
亀井

それでは、その金光明経とは、どんな経典なのか。

主として説くところは、法身常住(釈迦の永遠性)と、天法正論(国政に当る正しい信仰)と、四天王護国の思想(この経典に基づく護国の教え)、そして、天部(弁財天や吉祥天等)崇拝である。

中でも、護国思想が、特に重んぜられた。

仏典には、必ず、その経典を奉じると、どんな利益があるのかが、記される。
矢張り、その経典でも、四種の利益がある。

その第一を見ると、
国王の軍衆強盛にして、諸々の怨敵無く、疾病を離れ、寿命延長にして、吉祥安楽にして、正法興顕せん。
である。

まさに、国のための経典に相応しい。

護国思想だけではなく、疾病の方法を四季に渡り述べた、古代医学のような部分もある。

氏族統一と、天皇の確立のために、最も適切な経典として、認められたのである。

奈良朝に至り、東大寺を、金光明四天王護国之寺、と名付けたことでも、明らかである。

この経典は、国家安泰のためのあたかも万能薬のような印象を与える。
亀井

ただし、際立った思想性は無い。
利益を強調する、誇張するような、経典である。

護国のためならば、むしろ十七条憲法の講読こそ適切であったと思われるが、そういう形跡は全然ない。
亀井

この時代は、万葉集の歌が作られた時期と重なるが、仏教護国思想などは、全く歌われていないのである。

つまり、天皇と、その側近のみが、採用した。
また、当時の学僧の影響もあり、政治への迎合も考えられる。

ただし、この場合も、造型だけは、盛んに行われたのである。
この経典により、諸天像が、大きく促がされたと想像する。

四天王像である。
そして、やがては、四天王が、それぞれ信仰されるという形に至る。

矢張り、不思議なことは、仏教と、万葉集の関係である。
何故、仏教に係わる歌が無いのか・・・

それは、民衆と、為政者の乖離なのだろうか。
民衆は、まだ仏教に付いて行くことが出来なかったのである。
一部の者のみに許された世界と、考えられる。

ただ言える事は、仏教をその後、排斥することは、無かった。
明治維新の神仏分離を待たなければならない。

伝統として、息づくまでは、時間が必要だ。
更に、民衆にまで、広がるためにも。

平安期まで時間がかかるが、それでも、貴族程度の身分においての、仏教である。
民衆仏教となるのは、鎌倉時代である。

ただ、亀井も見落としているのは、道教の影響である。
すでに、民衆道教は、日本に伝来していた。
民衆道教とは、成立道教という、プロではなく、素人のそれである。

ちなみに、道教に関しては、私の別エッセイ、神仏は妄想である、に詳しく紹介している。



posted by 天山 at 06:07| 国を愛して何が悪い3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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