2014年08月26日

国を愛して何が悪い149

この点で興味深い問題がひとつある。仏礼拝の動機として、私はさきに病気の恐怖をあげたが、万葉集を読んで気づくことは、病気とか病苦を直接歌ったものは、憶良の「病に沈みて自ら哀ぶ文一首」と家持の長歌をのぞけば、殆どみあたらないことである。あれほど疫痢や天然痘や癪におそわれながら、歌の対象とはしなかった。
亀井

亀井は、「けがれ」として、避けたのかと、言うが・・・

つまり、病苦の方は、仏教の方へ持っていったようだ。
更に、暗黙の諒解があり、仏教に関することは、歌わないというもの。

採集の際に、落とされた可能性もある。
だが・・・

次に信仰の不消化ということも当然考えられる。仏教固有の生死への思索とか、来世への明確な観念とかに慣れなかった点もあろう。とくに歌のしらべにおいて当惑したのではなかったか。教典の内容や、仏像や儀式を、やまとことば独自のしらべにまで消化して表現することは容易ではなく、稀にそういうこころみをしたときは、唱へ、歌うには堪えられない稚拙なものが出来上がったにちがいない。
亀井

これで、ある。
信仰の不消化である。

教典、仏像、儀式・・・
それらは、ド肝を抜くものだったはずだ。

全く、異質なものである。
それ以前の、信仰を考えるとよい。

建物からして、想像だにしない形であり、その儀式は、渡来系の人たちによって、教えられ、今までにない、儀式の様である。

教典だとて、理解の仕様がない。
全くの不案内である。

大和言葉と、漢文の経典の違いは、遥かに大きいものだったはずだ。

勿論、漢文の書物は、どんどんと渡来していた。
現在の、英語を学ぶというようにものではない。
暗中模索である。

そして、仏教は、病気に対処する方法でもあった。
それが、最も、大きかったはずだ。
そして、その後、国家安泰のために。

その戸惑いは、想像も出来ないものだ。

更に、仏教を拒むことをしなかったということである。
それを、何とか、取り入れたという、精神である。

ここに、日本の精神の原型がある。
拒まず、受け入れて、我が物にして行く。
時間をかけて、継続して、理解を深める。

それは、その後の日本の姿でもある。

さて、更に、帰依する強い感情、来世への憧れ、現世への絶望感などは、全く歌われていない。
これも、信仰の不消化のせいだろう。

平安期になり、ようやく、仏教の信仰、救済に関する、名歌が生まれてくるのである。

万葉集については、私の別エッセイ、もののあわれについて、にて、多くを語っているので、一つ一つの歌は掲げない。

それでは、仏教を消化しようとしたとき、どの面から始まったのか・・・

常住真実なるもの(仏)が存在して、はじめて成立する観念であり、言わば常住真実なるものから与えられた一種冷徹な認識能力である。
亀井

それは、何か。
無常観である。

だが、
そういう思索の面は度外視して、人間流離の悲哀としてうけとり叙情化した。仏教の諸原理の中から、とくに無常観だけを、しかも「無常哀感」と言ったかたちでとらえた点に特徴があると言ってよかろう。こうして、辛うじてしらべと化したのだが、挽歌の哀感に比べるとやはり観念的で弱い。
亀井

これも、不消化である。

当時の日本人の精神生活の中では、仏教思想の影響は微々たるものであり、この程度のものであったことが、少なくとも万葉集を通しては言えると思う。同時に、思索の上でも、すべて述べてきたように、聖徳太子をのぞけば、殆ど見るべきものはなかった。
亀井

私は、この不消化を評価する。
もしこれが、単純に、仏教を全面的に受け入れて、それに従っていたら・・・

例えば、シルクロードの仏教国は、イスラムに襲われて、すべてが、イスラムに改心してしまった。
その程度の、弱さであった。

不消化があって、はじめて、仏教に対して、時間をかけて、理解を始めたといえる。そして、日本流の仏教を創作した。

それは、決して、インドでも、中国でも、朝鮮でもない、仏教である。

仏教を日本流に変容するだけの、力があったといえる。

この場合は、宗教を芸術と同じ位置付けにして、私は考える。
宗教とは、芸術の一部門である。

芸術の無い宗教は、皆無である。
芸術性の高い宗教・・・
それが、本来の宗教の、面目である。

日本では、芸術に皆、道がつく。
技芸の道である。武道も然り。

道とは、芸術の別名である。
だから、神道という場合も、それは、一つの芸術活動なのである。

信仰とは、その道への、貢献のことである。

その道を通して、日本人は、日本に貢献する。
日本という名称は、日の本であり、それは、祖霊を示す言葉である。

祖霊に貢献することが、日本人の精神の面目である。



posted by 天山 at 06:00| 国を愛して何が悪い3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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