2014年07月18日

もののあわれについて687

御心のうちにも、さすがにゆかしき御有様なれば、思し過ぐしがたくて、源氏「げにただ人よりも、かかる筋は、わたくしざまの御後見なきは、口惜しげなるわざになむ侍りける。東宮かくておはしませば、いとかしこき末の世の儲の君と、天の下の頼み所に仰ぎ聞えさするを、ましてこの事と聞えおかせ給はむことは、一事としておろそかに軽め申し給ふべきに侍ふべきに侍らねば、さらに行く先のこと思しなやむべきにも侍らねど、げにこと限りあれば、おほやけとなり給ひ、世の政御心にかなふべしとは言ひながら、女の為めに、何ばかりのけざやかなる御心寄せあるべきにも侍らざりけり。すべて女の御為めには、さまざままことの御後見とすべきものは、なほさるべき筋に契を交し、えさらぬことにはぐくみ聞ゆる御守りめ侍るなむ、後安かるべきことに侍るを、さるべき御あづかりを定めおかせ給ふべきになむはべなる」と奏し給ふ。




お心の中でも、さすがに気になるお方の事なので、放っておくことも出来ず、源氏は、仰せの通り、臣下の者より、このようなお方は、内輪の御後見役がいませんと、残念なことです。東宮が、こうしておいであそばすゆえ、ご立派な末世の東宮と、天下の頼みの所と仰ぎ、見申しております。まして、是非にと申し上げられましたら、一つとして、いい加減になさるはずもございません。全く、将来を心配されることは、ございませんが、仰せの通り、限界もあり、位に就き、世の政治も、お心のままになることは、言うものの、姫宮の御為に、どれほど、目だったお力添えができましょうか。何にせよ、姫宮の御為には、何かにつけて、本当の御後見役に当たるものは、矢張り夫婦として、契りを交わし、責任を持って、お守りする保護者のおりますことが、ご安心できることでございます。矢張り、どうしても、後世まで、ご心配が残りそうなら、適当に選ばれて、こっそりと、相当するお世話役を、お定めなさったほうが、よろしいかと、などと、申し上げる。




朱雀院「さやうに思ひ寄ること侍れど、それも難きことになむありける。いにしへの例を聞き侍るにも、世を保つ盛りの御子にだに、人を選びて、さるさまのことをし給へる類多かりけり。ましてかく、今はとこの世を離るる際にて、ことごとしく思ふべきもあらねど、又しか捨つる中にも、捨て難きことありて、さまざまに思ひ煩ひ侍る程に、病は重りゆく、またとり返すべきにもあらぬ月日の過ぎ行けば、心あわただしくなむ。かたはらいたき譲りなれど、このいはけなき内親王一人、分きてはぐくみ思して、さるべきよすがをも、御心に思し定めてあづけ給へ、と聞えまほしきを、権中納言などの一人ものしつる程に、進み寄るべくこそありけれ。おほいまうち君に先ぜられて、ねたく覚え侍る」と聞え給ふ。




朱雀院は、そのような考えもあるのですが、それも、難しいこと。昔の例を聞きましても、位に就いている全盛当時の姫さえ、人選の上、そのような婿選びをされた例は、多かった。まして、このように、これが最後と、この世を離れる間際になり、仰々しく思っても、よいことではないが、このように、捨て去る中にも、捨て去り難いことがあり、あれこれと、悩んでいます間に、病気は重くなり、二度と、取り返すことのできない月日が経ってゆくので、落ち着かない。ご迷惑な譲りだが、この幼い内親王一人、特に、お守りくださり、適当な人を、お心のままに決めて、渡してください。と、申し上げたいのだが、権中納言などが、独身でいた間に、申しだしておくべきでした。太政大臣に先を越されて。残念に思います。と、申し上げる。

権中納言とは、夕霧である。

何とも、優雅な会話である。




源氏「中納言の朝臣、まめやかなる方は、いとよく仕うまつりぬべく侍るを、何事もまだ浅くて、たどり少なくこそ侍らめ。かたじけなくとも、深き心にて後見聞えさせ侍らむに、おはします御蔭に変はりては思されじを、ただ行く先短くて、仕うまつりさす事や侍らむと、疑はしき方のみなむ、心苦しく侍るべき」と、うけひき申し給ひつ。




源氏は、中納言の朝臣は、生真面目という点では、しっかりお仕えすることでしょうが、何事も、まだ、未熟で、分別が足りません。もったいないことですが、私が心を込めて、後見申し上げたら、あなたさまに変わらないと、姫宮は、思いますでしょうが、ただ、私にも、余命が少なく、途中でお仕え出来なくなる事もあろうかと、心配します。お気の毒です。と、お引き受け申し上げた。

つまり、源氏が姫宮を、妻にするということだ。




夜に入りぬれば、主人の院方も、客人の上達部たちも、皆御前にて御あるじの事、精進物にて、うるはしからずなまめかしくせさせ給へり。院の御まへに、浅香の懸盤に御鉢など、昔に変はりて参るを、人々涙おしのごひ給ふ。あはれなる筋の事どもあれど、うるさければ書かず。
夜ふけて帰り給ふ。禄どもつぎつぎに賜ふ。別当大納言も御送りに参り給ふ。あるじの院は、今日の雪にいとど御風加はりて、かき乱りなやましく思さるれど、この宮の御事聞え定めつるを、心安く思しけり。




夜になり、主人の朱雀院が、お客の上達部たちも、皆御前に、集まり、ご馳走がある。精進物で、儀式ぶらず、優雅にされた。院の御前に、浅香懸盤の上に、御鉢などという、今までとは違った物で、召し上がる。それを拝して、人々は、涙を拭く。胸の迫ることも多かったが、ここでは、書きません。
夜が更けて、お帰りになる。禄の品々を、次々と下賜される。別当大納言も、お送りにお供される。
御主人の上皇は、今日の雪に、いっそうお風邪まで召されて、気分が苦しい思いだが、この姫宮のことを、決めたことで、安心された。

あはれなる筋の事ども
色々な、胸に迫るお話・・・
様々な様子についても、あはれなる筋・・・と言う

うるさければ書かず
男たちの世界のことだから、書かない。
よく解らないから、書かない。




posted by 天山 at 06:37| もののあわれ第12弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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