2014年07月15日

伝統について71

窓越しに 月おし照りて あしひきの 嵐吹く夜は 君をしそ思ふ

まどごしに つきおしてりて あしひきの あらしふくよは きみをしそおもふ

窓越しに、月が照り渡り、あしひきの山風が吹く夜は、あなたを偲ぶのだ。

あしひきの 嵐吹く夜は
あしひき、は、本来、山の形容で、山風である、嵐を形容する。

誰にでも、あてはまる歌だ。
自然なメロディーとなっている。

川千鳥 住む沢の上に 立つ霧の いちしろけむな 相言ひそめて

かわちどり すむさわのえに たつきりの いちしろけむな あひひそめて

川千鳥が住む、沢の上に、立つ霧のように、人目について、しまうだろう。愛し合うようになったら。

愛し合う・・・相言ひそめて
あひひそめて、が、愛し合うことなのだ。

何とも、奥ゆかしい限りだ。

わが背子が 使を待つと 笠も着ず 出でつつそ見し 雨の降らくに

わがせこが つかひをまつと かさもきず いでつつそみし あめのふらくに

わが背子の、使いを待つと、笠も着けず家を出て、様子を見続けていた。雨が降ってきたのに。

使いの者を待つために、外に出た。
雨が降るのに、笠も着けず。

気持ちの逸る心境を歌う。
素直で、素朴だ。

韓衣 君にうち着せ 見まく欲り 恋ひそ暮らしし 雨の降る日を

からごろも きみにうちきせ みまくほり こひそくらしし あめのふるひを

新たに作った、韓衣を、あなたに着せて見たいと思い、恋い続けて、一日を過ごした。雨の降る日に。

何ということの無い歌。
思いが、口から、すらすらと、歌になる様子だ。

彼方の 赤土の小屋に 小雨降り 床さへ濡れぬ 身に添へ吾妹

をちかたの はにふのをやまに こさめふり とこさへぬれぬ みにそへわぎも

人里遠い、みすぼらしい小屋に、小雨が降り、床までも、濡れてしまった。私の身に添って寝て欲しい、吾妹よ。

赤土、とは、地面に直に寝る小屋である。

解説によると、共同の体験を詠んだ、集団の歌であると、ある。
同じような、体験をしていたのだろう。

定期的に出掛ける、仕事があったのだろう。

こうして、当時を想像しても、よく解らないのである。
現代とは、全く違う状況である。

しかし、その心と、現代人の心の差があるのかと、言われれば、大差は無いと思われる。

万葉時代と、現代と、人は、矢張り、同じようである。
心の、原型がある。
その原型が、時代に合わせているだけである。




posted by 天山 at 05:42| 伝統について2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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