2014年03月08日

沈黙を破る85

私の、唯一の楽しみ・・・と言えば・・・
銭湯である。

だが、週に一度程度。
後は、部屋のシャワーを浴びる。
浴槽にお湯を張ることはない。
銭湯の広さを覚えたからである。

その銭湯で、様々な人と会う。
多くは、老人である。
その老人たちの話を聞く。

名前も知らない人たち・・・

彼らの、昔話は、実に面白い。
特に、戦中戦後を生きた人たち。

空襲に遭ってさ・・・
皆、死んじゃったよ・・・
そんで、死体の処理だよ・・・
もう、滅茶苦茶でさ・・・

何でも食べたよ・・・
ネズミは、旨かった・・・
カラスは、不味いよ・・・

聞くともなしに、聞いていると、とんでもない話が飛び出す。

ヤクザの老人も多い。
ところが・・・
全く、そのヤクザの怖さがない。

そして、我が身の老いを考える。

時に、顔を見せなくなる人もいる。
死んだのだ。
だが、誰も、そのことを口にしない。

当たり前のことだからだ。
逆に、それが、笑いを誘う。

俺がよ・・・ここに来なくなったら・・・死んだと思え・・・である。
そして、本当に、そうなる。

名も知らぬ人たち。
ところが、時々、道で出会うと・・・
あーーー元気かい・・・
はい・・・
この頃、見えないね・・・

海外に行っていることを知る人と、知らぬ人がいる。

今度は、フィリピンです。と、言うと、活動を知らない人は・・・
いいね・・・極楽だね・・・
女は安いしさ・・・麻薬は手に入るし・・・
えっ・・・

俺もさ・・・昔、行ったよ・・・
マニラのケソン市でさ・・・女買って・・・さ・・・
えっ・・・

すると、
この人は、違うって・・・
と、中に入って、話を中断させる人もいる。

チェンマイは、いい女が多いから・・・
えっ・・・
今も、流行ってんだな・・・
えっ・・・

昭和初期に出来た、銭湯である。
建物が、実に古めかしくていい。
浴槽が一つ。
子供の頃の風呂屋と、同じである。

60を過ぎても、現役で働く人がいる。
いつも、その仕事の事を尋ねる。
面白い。
内緒の話を教えてくれる。

若者は、ほとんどいない。
老人の場所である。

我が身の明日を見る。
それが、精神衛生に良い。

いずれ・・・
老いる。
確実に・・・
そして、死ぬ。

お前さん・・・何してるんだい・・・
と、時々、聞かれる。
売れない作家です・・・
へ・・・作家さんかい・・・

と、ウソを言う。

何を言っても、聞き流される場所、銭湯である。




posted by 天山 at 05:46| 沈黙を破る2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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