高橋 巌 現代の神秘学
意志の力が働かない限り、宇宙には進化という、契機が存在しない。
シュタイナーは、意志がそもそも、物質に関わり始めた最初の存在形態を「熱」と考え、霊的実体が、熱となって現れるまでの、流出の過程を、土星紀と、記した。
意志であった世界が、更に進化発展してゆく過程で、次にシュタイナーが問題にしているのは、意志が自分と他者との関係を意識するようになり、そして意志が、感情にまで進化するようになる過程である。
感情が、発現するまでの過程を、太陽紀、という言葉で、表わした。
更に進化してゆくと、思考が感情と意志の中から生み出される。
それが、月紀、の時代。
月紀に、意志と感情と思考に対応する、外界が創られた。
そして、これらの内的存在のほうが、更に進化発展して、地球紀に入る。
地球紀は、内的存在、つまり魂の在り方として、更に新しい何かを加えたということに関して、シュタイナーが語ることは、また、面白い。
シュタイナーは、地球紀においてはじめて生じたのは「愛」だ、といっています。地球紀は愛を実現するための進化期である、というのが、シュタイナーが民族を考えるときの基本的な考え方なのです。
高橋
意志、感情、思考、愛という、四つの魂の要素という。
実は、この考え方は、すでに、神道にある。
魂とは、和、荒、奇、幸、である。
それぞれが、それぞれの働きをする。
魂の四区分である。
更に、それぞれが、独立している。
さて、シュタイナーは、今日の人類が、地球紀において、実現すること、この基本的な課題に応えるために、人類の指導霊として、キリストと呼ぶ、形態霊、あるいは、人類霊が現れて、現在の人類を導いているという。
更に、人類史の、それぞれの時代に、人間が愛を実現するのに、相応しい、在り方をすることが、できるように、それぞれの時代を導く、霊的な力を、人格霊、時代霊という。
そのように、考えているのである。
ここまでくると、一種の宗教的な、形相を帯びてくる。
シュタイナーは、地球紀の進化の歴史は、大きく二つの時期に、分かれるという。
アトランティス期までの、地球と、アトランティス以後の地球紀である。
アトランティス期は、今から、一万年前に終わった。
その時までの、約百万年間、つまり、第四洪積世の時期が、アトランティス文化期である。
その頃の、人類は、五つの人種に分かれて、存在していた。
それらが、霊的存在の導きの下に、秘儀を通して、それぞれ固有の文化を生み出した。
アトランティス大陸が没落した後、この五大人種は、様々な、民族大移動を繰り返して、今日に至る。
その人類進化のプロセスには、二つの人類文化の流れが現れている。
北方系と、南方系である。
兎に角、シュタイナーの考え方を、受け入れてみるしかない。
まず、北方からは、ヨーロッパ北部、中部、黒海、カスピ海北側を通り、タリム盆地に入り、南下して、原インド文化、原ペルシャ文化、エジプト=ローマ文化、そして、第五後アトランティス文化、つまり、現代ヨーロッパ文化を形成する。
アトランティス大陸中南部からは、南方の流れがある。
アフリカ、アラビア、原スメル文化、そして、北上して、イラン文化、北方系の、原ペルシャ文化と、合流する。
それが、南方系の第二期に当たる。
それから、アラル海周辺のツラン低地を通り、北上する。
ウラル山脈、アルタイ山脈の間で、東西に分かれ、一方は、シベリアからベーリング海峡を越えて、北アメリカへ移動し、または、モンゴル、ツングース、更に、朝鮮半島から、日本。
または、中国東北部から、華北平原へ南下した。
西に進んだグループは、フィンランド、エストニア、ハンガリーにまで、移動する。
これが、南方系の第三期ツラン文化期である。
そしてこの時期に、主として、黄色人種系の文化の流れが、アジア大陸の広大な地域に、シャーマニズムという言葉で、特徴付けられる、共通の霊的文化を、生み出した。
北方系が、エジプト=カルデア期に秘儀の文化を生み出した時期に対応する。
更に、北方系が、ギリシア=ローマ文化を形成した頃、南方系は、中国を中心として、比類ない、中国文化、漢字文化を形成した。
そして、15世紀前後から、南方系と、北方系が必然的に合流し、対立し、融合すべき、現代文化期を、生じさせている。
それぞれの流れには、また、色々な特色がある。
結局、そのお話の行く着くところは、愛、という、考え方である。
この、愛、という言葉は、深く考察しなければならない。
通常の、愛という、概念とは、違う。