2013年07月20日

もののあわれについて623

御物語ども、取り集め聞え給ふついでに、源氏「内の大臣は、日隔てず参り給ふことしげからむを、かかるついでに対面のあらば、いかに嬉しからむ。いかで聞え知らせむと思ふことの侍るを、さるべきついでなくては、対面もありがたければ、おぼつかなくてなむ」と、聞え給ふ。




色々なお話をするついでに、源氏は、内大臣は、日をおかずに参られるでしょうが、こうした機会にお目にかかることができれば、どんなに嬉しいことでしょう。何とかして、お話しようと思うことがありますが、適当な機会がなくて、お目にかかるのが、難しいので、気になりまして、と申し上げる。




大宮「おほやけ事のしげきにや、私の志の深からぬにや、さしもとぶらひものし侍らず。宣はすべからむ事は、何ざまの事にかは。中将の恨めしげに思はれたる事も侍るを、「初めの事は知らねど、今はけにくくもてなすにつけて、立ちそめし名の、取り返さるるものにもあらず、をこがましきやうに、かへりては世人も言ひ漏らすなるを」などものし侍れば、たてたる所、昔よりいと解け難き人の本性にて、心得ずなむ見給ふる」と、この中将の御事と思して宣へば、うち笑ひ給ひて、源氏「いふかひなきに許し捨て給ふこともや、と聞き侍りて、ここにさへなむかすめ申すやうありしかど、いと厳しういさめ給ふ由を見侍り後、何にさまで言をもまぜ侍りけむと、人わるう悔い思う給へてなむ、よろづの事につけて、清めという事侍れば、いかがはさも取り返しすすい給はざらむ、とは思う給へながら、かう口惜しき濁りの末に、待ちとり深うすむべき水こそ出で来難かべい世なれ。何事につけても末になれば、落ち行くけぢめこそ安く侍めれ、いとほしう聞き給ふる」など、申し給うて、




大宮は、公務が忙しいのか、私への気持ちが深くないのか、それほど、見舞いには来ません。お話になりたいということは、どんなことですか。中将が、恨めしく思っているとのことですが、「初めの事は、知りませんが、今となっては、二人を引き離そうとしたところで、一度立った噂が、取り返せるわけでもなく、馬鹿げたことのように、かえって、世間の人も噂するとか」などと、聞かせますと、言い出したことは、昔から決して、後へは引かない性質で、解ってくれないように見受けられます、と、この中将のことと、思っていると、にっこりして、源氏は、今更言っても、仕方ないことと、許してくだると、耳にしています。私までが、内大臣に、それとなく口添え申したことがありますが、夕霧を大変きつく叱ったことを聞きましてからは、何のために、あれほど口出しをしたのかと、外聞も悪く、後悔しました。何事も、汚れには、清めがございますから、どうしてそれでも、綺麗さっぱりと、水に流して下さらないことがあろうかと、思いますが、これほど酷く濁った果てに、いくら待っても、見事に綺麗にしてくれる水というものは、出てきにくいようです。万事、後になるほど、だんだんと悪くなってゆきやすいようですから、内大臣にとっては、お気の毒なことと、聞いております、などと、おっしゃり・・・




源氏「さるは、かの知り給ふべき人をなむ、思ひまがふる事侍りて、ふいに尋ね取りて侍るを、その折りは、さるひがわざとも明かし侍らずありしかば、あながちに事の心を尋ねかへさふ事も侍らで、たださるもののくさの少なきを、かごとにても、何かは、と思う給へ許して、をさをさむつびも見侍らずして、年月侍りつるを、いかでか聞し召しけむ、内に仰せらるるやうなむある。「尚侍宮仕へする人なくては、かの所の政しどけなく、女官なども、おほやけ事を仕うまつるに、たづきなく事乱るるやうになむありけるを、ただ今上に侍ふ故老の典侍二人、またさるべき人々、さまざまに申さするを、はかばかしう、選ばせ給はむたづねに、類ふべき人なむなき。なほ家高う人の覚え軽からで、家の営みたてたらぬ人なむ、いにしへよりなり来にける。したたかに賢き方の選びにては、その人ならでも年月の労になりのぼる類あれど、しか類ふべきもなし、とならば、おほかたの覚えをだに選らせ給はむ」となむ、内々に仰せられたりしを、似げなき事としも、何かは思ひ給へむ。




源氏は、実は、内大臣がお世話になるはずの人の、思い違いがありまして、思いがけず、探し出し、引き取りましたが、その時、間違いだとは、はっきりと言ってくれず、しいて、事情を詮索することもしませんでした。ただ、そうした子が少ないので、口実でも、構うものかと、自分勝手に、納得して、全く親身な世話もしませんで、年月が経ちました。それを、どういうことで、お耳にあそばしたのやら、陛下から、お言葉を下されることがありました。
尚侍は、勤める者がいなくては、内侍所の事務が整わず、女官なども、職務を行うのに、頼りところなく、仕事が出来ないようでしたが、現在のところは、宮中に仕えている、年寄りの典侍二人、またその他に、相当な者たちが、それぞれに任官を懇願するが、立派に、選びあそばそうとの求めに、及第する人がいない。矢張り、尚侍ともなれば、家柄高く、評判が重くて、生活の心配のない人が、昔からなっている。甚だしく賢いということでの選考ならば、そういった人でなくても、長年勤務の功労により、昇進する例があるが、それに当たる者もない。ということになると、せめて、一般世間の人望にでもよって、人選あそばそう、と、内々で、お言葉を賜りましたが、相応しくないことと、思えません。




宮仕えは、さるべき筋にて、上も下も思ひ及び、出で立つこそ心高き事なれ、おほやけざまにて、さる所の事を司り、政のおもぶきをしたため知らむ事は、はかばかしからず、あはつけきやうに覚えたれど、などかまたさしもあらむ。ただわが身の有様からこそ、よろづの事侍めれ、と思ひ弱り侍りしついでになむ、よはひの程など、問ひ聞き侍れば、かの御尋ねあべい事になむありけるを、いかなべい事ぞとも、申し明らめまほしう侍る。ついでなくては対面侍るべきにも侍らず。やがてかかる事なむと、あらはし申すべきやうを思ひめぐらして、消息申ししを、御悩みにことづけてもの憂げにすまひ給へりし、げに折りしも便なう思ひ止まり侍るに、よろしうものせさせ給ひければ、なほかう思ひおこせるついでにとなむ思う給ふる。さやうに伝へものせさせ給へ」と、聞え給ふ。




宮中にお仕えするのは、女御更衣になり、身分の上の者、下の者も、寵愛を望んで入内するのが、理想が高いというものです。一般の職で、そういう役所を配し、事務を処理するようなことは、何でもない簡単なことに思われますが、そうとも限りません。ただ、本人の人柄によって、万事決まると考えるようになりました。そのついでに、年齢のことなどを尋ねてみますと、内大臣のお探しになっている人でありましたが、どのようにいたすべきかと、はっきり相談したいと思います。わざわざということでなければ、お目にかかるわけにいきませんから、すぐにお知らせをと、打ち明けて知らせる方法として、手紙を差し上げたのですが、こちらのご病気を口実に、気が進まないらしく辞退されました。なるほど、時期も悪いと思い止まりました。ご病気もよろしいようで、矢張りこういうふうに考えました、この機会にと思います。そういうふうに、お伝えくださるようにと、申し上げる。

何とも、回りくどい話である。
回りくどいのは、源氏の、玉葛に対する、思いである。

やがてかかる事なむと
玉葛の裳着の腰結を頼み、その時にと思ったという。

さっさと、言わないのは、源氏の邪心である。
物語の難しいのは、こういう、心模様の場面だ。

一体、何を言いたいのか・・・
解説を見て、ようやく、察することが出来るのである。




posted by 天山 at 05:20| もののあわれ第12弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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