2012年10月11日

伝統について58

今さらに 君が手枕 まき寝めや わが紐の緒の 解けつつもとな

いまさらに きみがたまくら まきねめや わがひものおの さけつつもとな

また改めて、あなたの手枕をして寝ることがあろうか。なのに、私の紐の先が解けて、心細いこと。

寝めや
強い否定を伴う疑問である。
寝ることが、どうしてあろう・・・

しかし、紐の緒が解けるのである。
何とも、色気のある歌だ。

寝る、とは、情交する。端的である。
もとな、の、な、は、おぼろげである。

白袴の 袖に触れてや わが背子に わが恋ふらくは 止む時もなき

しろたえの そでにふれてや わがせこに わがこひふらくは やむときもなき

白袴の袖に触れたからか、わが背子への思いは、絶え間ない。

白袴とは、袖の美称。

強い思いが、わが、を繰り返すことから、解る。

夕トにも 占にも告れる 今夜だに 来まさぬ君を 何時とか待たむ

ゆふけにも うらにものれる こよいだに きまさぬきみを いつとかまたむ

夕卜にも、占にも、来ると出た今夜なのに。来ないあなたを、いつとして待とうか。

夕方の道に人の言葉を聞いて、吉凶を判断する占いである。
辻占、ともいう。

何時まで待てばよいのかと、迷うのである。


眉根掻き 下いふかしみ 思へるに 古人を 相見つるかも

まよねかき したいふかしみ おもへるに いみしえびとを あいみつるかも

眉をかいて、心の中で、不思議に思ったところ、古いなじみと出会ったのである。

眉が痒くなり、かくのは、恋人に会う前兆と言われた。
昔の恋人に出会ったのだろう。

敷袴の 枕をまきて 妹と吾 寝る夜は無くて 年そ経にける

しきたえの まくらをまきて いもとわれ ねるよはなくて としそへにける

しきたえの、枕をまいて、妻と私との寝る夜がないまま、年がたってしまった。

年とは、一年のこと。

寝ることがなく、一年が過ぎたと、嘆く。
その意味は、解らない。

何のことは無い歌である。
しかし、歌にするべきことが、心にはある。

一度も、妻と関係を持たないという、状況は不自然である。

しかし、この歌から詮索できるものは無い。
それでも、万葉集に採用されているというのは、何か意味があってのことである。

枕を、まく、という表現が、また、新しい。
二人で、枕を巻くのだろうか・・・




posted by 天山 at 06:24| 伝統について2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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