2012年08月16日

伝統について56

現にも 夢にもわれは 思はざりき 古りたる君に 此処に逢はむとは

うつつにも いめにもわれは おもはざりき ふりたるきみに ここにあはむとは

正気ではない。夢でさえも思わなかった。古い昔の君に、ここで逢おうとは・・・

昔の恋人に出会ったのである。
まさか、こんなところで逢うなんて・・・
非常な驚きである。

黒髪の 白髪までと 結びてし 心ひとつを 今解かめやも

くろかみの しろかみまでと むひびてし こころひとつを いまとかめやも

黒髪が、白髪になるまでと、誓って結んだ一つの心。どうして、今解いてしまうことなどありましょうか。

まあ、この歌の通りであろう。
黒髪の白髪になるまで、一緒にいるという、決心。
女の心である。

心をし 君に奉ると 思へれば よしこのころは 恋ひつつをあらむ

こころをし きみにまつると おもへれば よしのこころは こひつつをあらむ

私の心は、あなたに差し上げている。だから、この頃は、ただ、お慕いするだけです。

一筋の思い。恋心である。
もう、あなたに、捧げた心があるから、今は、ただ、慕うたけでいい、と言うのである。

思ひ出て ねには泣くとも いちしろく 人の知るべく 嘆かすなゆめ

おもひでて ねにはなくとも いちしろく ひとのしるべく なげかすなゆめ

私を思い出して、涙にくれても、人に解るように、嘆かないでください。

ねには泣く、とは、泣くことの強調である。
いちしろく、とは、はっきりと、明確に・・・

何とも、切ない状況である。
人に気づかれないようにと、敬語で歌うのである。


玉鉾の 道行きぶりは 思はぬに 妹を相見て 恋ふる頃かも

たまほこの みちゆきぶりは おもはぬに いもをあいみて こふるころかも

玉鉾の道を行くと、予期せず、妻に出会った。益々、恋しく思うこの頃である。

男が女の元に、通う形の結婚であるから、このような出会いになる。
皆が認めたものも、認めないものも、色々である。

結婚を証明するものは、何一つ無い。
そんな時代の、歌。

中には、複数のおんなの元に、通う男もいただろう。
女は、待つ身なのである。

現代は、益々、女が強くなり、そんな形の恋愛も、少なくなったようだ。
それは、それでいい。

更に、バーチャルな恋愛関係も、多い。
出会い系サイトで、アルバイトしていた、青年が女になりすまして、男とメールのやり取りをすると、聞いたことがある。

引き伸ばして、儲けるのである。
だから、決して逢うことはできない。

それでも、寂しいゆえに、見ぬ女に、メールを送る。
これが、時代である。
どこで、満足するのか・・・
が、問われている。



posted by 天山 at 05:43| 伝統について2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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