2012年08月03日

神仏は妄想である。379

道教の神仙思想は、古代日本人に、どのような世界観をもたらしたのか。

日本人が、古くから描いてきた、理想郷とは、極楽と、高天原であった。
ところが、神仙思想が入ると、トコヨという、もう一つの理想郷ができたのである。

日本書紀の神武東征の際の記述に、天皇の兄の一人である、三毛入野命、みけいりぬのみこと、が、荒れ狂う海に飛び込み、死ぬ。
だが、そこには、常世国へ言ったと、書かれている。

すでに、常世という国は、常識的に存在していたのである。
恐るべき道教である。

では、常世という国は、どのような所なのか。

この常世国について、本居宣長が、解釈をしている。
常世とは、登許、とこ、曾許、そこ、に通じて、底依国、そこよりのくに、と同じ意味だという。
そして、それは、古代人の、世界観を構成するものだとした。
底、というのは、方向を示すものではない。

どの方向でも、至り極まるところを、示すのである。

遠く離れる極限である。
更に、それは、現実の国土から、隔絶されているのである。

特別、限定された場所ではないのである、という。

それでは、単なる、概念的存在に過ぎないのである。
だが、それでも、古代人たちは、ある空間的広がりを持つ、ところとして、観念していたようである。

常世へ行くということは、死ぬことである。
現実の世とは、異なる世界である。
つまり、死後の世界となる。

それ以前の、古代人たちの、死後の世界は、黄泉の国である。
だが、そこは、国土と隔てられてあるが、現実の国土と、ほとんど変わらない場所という意識である。
この世の、延長線にあるところ、である。

だが、それも、死によってのみ、超えられるのである。

だから、この黄泉の国と、遠き限りない彼方にある、常世を想定できたことは、不思議なことではなかったのである。

面白いのは、常世国は、死者の国であるが、死者とは、抽象化された霊的存在ではないのである。
それは、現世の人間と同じ形で、同じ生活を営むと、考えられた。

更に、死の国といっても、暗黒の、忌わしい場所ではないのである。

少し、話は、飛ぶが、私の霊学から言えば、幽界に当る場所である。
現実の世と重なり、現実の生きている様子と、同じところなのである。

更に、常世国は、美しい国と、意識されていたという。

これは、考えると、死というものに対する、恐れを取り除く効果がある。

道教の神仙思想が、ここまで、日本人の世界観に入りこんでいるということを、驚くのである。

更に、常世国とは、空間的に無限であり、時間的に言うと、永遠である。

もう一つ、特徴的なことは、常世には、蓬莱山がある。
常世を具体的にするために、創作された、蓬莱山・・・

この、神仙思想は、四世紀から、八世紀に渡り、半島や大陸から渡来してきた人たちを通して、伝えられたものである。

常世国の、具体的内容は、楽土観と、不老長寿観を通して、把握するということである。

ここまで、説明すると、実におかしいことに気づく。
楽土観は、解る。しかし、死んで、不老長寿・・・
詐欺のようである。

さて、研究家は言う。
常世国自身に、本来、いささかも恐怖の感覚が含まれていなかったことである。なるほど、常世国は黄泉の国と結合した。が、決してそれは、本来、死の国という意味からではなかった。非常に遠くて往来できない、ということからであった。

好ましい、慕わしい郷という、意識。
死の国とは、基本的に感覚を異にする世界。

更に、それに、海神国というものがある。
これも、古代人が持った、世界観であり、最も楽しい所と理解された。

常世国が、海の彼方に広がる常、とことわ、に楽しい理想郷として、現実のものにするという、古代人の願いを感じる。

そういう、場所があるから、この世の辛い現実を、何とか生き抜いてゆくと、考えることもできる。

矢張り、人間には、神話、更に、御伽噺・・・そして、死後の楽しい世界などなど・・・
そういう思いが必要なのである。

すべては、人間の創作である。
あらゆる、宗教、思想における、お話しは、逃避ではなく、前向きに生きようとする、励ましの創作と、考えると、納得する。

この、道教の影響が、目に見えないところで、今も、生き続けるのである。
そして、それを、伝統的にしてしまった、日本人の心の親和性と、寛容さである。

死んでも、常世に行くなら・・・
とても楽しく、美しい死後の世界・・・

信じる者は、騙されるが、騙された振りをして、生きることも、妙味がある。
人間の、妄想の様、本当に、感心するのである。
在ると、思えば、在る、とは、心的事実のようである。



posted by 天山 at 04:53| 神仏は妄想である。第8弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。