2010年10月19日

天皇陛下について 75

日本では、天皇陛下はじめ、開戦を避けるべく、努力していた事実を書いてきた。

そこで、もう一度、世界的な状況と、日本を見る。
前回も、書いたことで、重複することもあるが、開戦に到った経緯の、大きな要因である。

1929年、ニューヨークの証券市場で、株の大暴落を引き金に、世界中に、大不況の嵐が吹き荒れる。

アメリカでは、四人に一人が、職を失った。
そして、日本にも、ヨーロッパにも、その影響が派生した。

この株式大暴落は、「ホーリー・ストーム法」が提出されたからである。

アメリカ議会は、この法律を1930年6月に、成立させた。
この法律の目的は、一つ。
不況で苦しむ国内産業を保護するためである。

アメリカに輸出される商品1000品目に、超高率の関税をかけるということである。

世界に大不況が起こった時、アメリカのような大国が、関税障壁をかけるのは、世界貿易の、破壊に他ならない。

この法律を見て、世界中の国が、報復措置を取った。
わずか、一年半で、二十五の国が、アメリカ製品に対して、関税を引き上げた。

結果は、アメリカの貿易量は、一年後、半分以下に落ち込み、世界全体の貿易も、更に不振になった。

不況を克服するために行ったことが、更に、不況をもたらした。

ホーリー・ストーム法の施行により、アメリカが自由貿易から離脱したことを受けて、イギリスも、自衛のために、保護貿易を行うことになる。

1932年昭和7年、カナダのオッタワに大英帝国のメンバーが、集い、会議が開かれた。

英帝国経済会議である。
参加国は、イギリス、カナダ、アイルランド自由国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、ニューフィンランド、南アフリカ連邦、南ローデシアである。

この会議で、帝国外からの、輸入を制限し、大英帝国内で、自給自足体制に入るということである。
それは、帝国内で、商品や、原材料を動かす場合は、無関税か、特恵関税で、帝国外から来るものは、高率の関税をかけるものである。

当時の、大英帝国は、植民地を含めると、世界の四分の一を占める、規模である。

会議に参加した他に、香港、シンガポール、マレーシア、北ボルネオ、エジプトなどの、植民地、また、イギリスが支配権を持つ中近東の、産油地帯が、その影響下に入る。

この巨大ブロックが、大不況に拍車を掛けた。

当時の日本は、生糸などを売り、外貨を稼ぎ、その金で買った原材料で、安い雑貨類を作り、海外に輸出して、成り立っていた。
日本は、乏しい利益で近代化を興し、近代的軍備を整えていたのである。

それが、経済ブロック化したら、どうなるか・・・
製品の輸出も、資源の輸入も、出来ない。
国内産業は、崩壊する。

ヨーロッパでも、ドイツ、イタリアなどのように、持たない国は、英米のように、持てる国の、経済ブロックに対抗して、国家社会主義化、ファッショ化が、国民の支持を得るようになる。

1930年代の、ファッショ化は、アメリカと、イギリスがしたのである。

世界的に、不況が回復しないということで、多くの人は、自由放任の時代は、終わったのだと、考えるようになる。
問題は、単に、ホーリー・ストーム法なのであるが・・・

そこで、政府による、統制経済という、アイディアが出てくる。
中央政府が強権を発動させることで、経済活動を振興するという、つまり、社会主義である。

大不況のころから、はじまる、スターリンの五ヵ年計画の成功が、それを裏づけように思われたという、悲劇である。

ちなみに、成立当時の、ソ連は、破産寸前であった。
革命から、数年後は、餓死者が数百万人も出る。
人が人の死体を食い、飢えた親が子供を、ヴォルガ川に放り込むという・・・

しかし、1929年、大恐慌がはじまった年、第一次五ヵ年計画は、ソ連経済を復活させたように、見えた。

世界が、不況に苦しむ中、ソ連が活況を得ているという、姿は、社会主義に、人々の目を向けさせた。
だが、決して、ソ連が、成功したわけではない。
後々に、その弊害が出てくる。

そして、アメリカの、ルーズベルト大統領は、1933年、ニュー・ディール政策を行った。

社会福祉を導入し、公共事業を行うことで、景気を立て直そうとした。だが、失業者を減らすことは、出来なかった。

アメリカが、不況から、完全に脱出するのは、第二次欧州戦争が、始まってからである。

戦時体制による、特需で、失業者は消え、景気も良くなった。

さて、ドイツである。
経済的苦境を解決すると、現れたのが、ヒトラーのナチス。
正式名称は、国家社会主義労働者党である。

ソ連も、ナチスも、社会主義である。

ナチスが登場してから、ドイツ経済は、驚異的な復興を成し遂げた。

しかし、社会主義の経済政策は、言ってみれば覚醒剤のようなものだ。覚醒剤の服用者は、最初のうちは体中に力が満ち溢れ、全然寝なくてもいいような気持ちになるという。しかし、その活力は覚醒剤が与えたものではない。単に自分の肉体を燃やしてエネルギー源にしているだけにすぎないのである。だから、そのうち身体は痩せ衰え、健康が失われてくる。
統制経済も同じである。当初は効果が上がるように見えるけれど、それは今まで蓄えていた富が生み出したものであって、その富を使いきってしまえば、後はないのだ。
昭和史 渡辺昇一




posted by 天山 at 00:00| 天皇陛下について2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。