2009年08月25日

伝統について 24

わが背子が 浜行く風の いや急に 言を急みか まして逢はざらむ

わがせこが はまゆくかぜの いやはやに ことをはやみか ましてあはざらむ

あなたが、浜を行くときの、風のように、早くも、噂が立ちました。まして、は、もう、前にも、まして、会えないのでしょうか。


複雑な心境である。
中々、逢いに来ない、恋人に、恨み言を言うのか。

いや急に 言を急みか
風のように、速くも、忽ち、噂が立つ。
そのせいなのですか、あなたが、逢いに来ない訳は、ということにもなる。

遠き妹が 振仰け見つつ 偲ふらむ この月の面に 雲なたなびき

とほきいもが ふりさけみつつ しのふらむ このつきのおもに くもなたなびき

遠くにいる、妻が、振り仰いで、偲んでいるだろう。だから、この月の面に、雲よ、たなびくな。

一緒に、月の面を眺めて、心を一つにする。
雲は、それを邪魔するな、という。

素朴さが、いい。


山の端に 出で来る月の はつはつに 妹をそ見つる 恋しきまでに

やまのはに いでくるつきの はつはつに いもをそみつる こひしきまでに

山の端に、出る月のように、わずかに、妻の姿を見たのだ。恋しいまでに。

ただ、姿を見たことで、心が満たされる。
はつはつに、とは、少しばかりである。
初初と書いてもいいような気がする。

恋しきまでに
恋に苦しむ心なのである。


吾妹子し われを思はば 真澄鏡 照り出づる月の 影に見え来ね

わがもこし われをおもはば ますかがみ てりいづるつきの かげにみえきね

私の妹子が、私を思うならば、真澄の鏡のように、輝きだす月のように、面影に見えて欲しい。

自分が、彼女にとって、一番の相手でいて欲しいのだ。
光り輝く、一人の、男として、見て欲しいのだ。

ひさかたの 天照る月の 隠りなば 何になそへて 妹を偲はむ

ひさかたの あまてるつきの かくりなば なにになそへて いもをしのはむ

久方の、天を照らす月が、隠れたならば、何にたとえて、妻を偲べばよいのか。

夜の光に溢れた、現代では、月の光も、天を照らす光にはならないが、当時は、月の光は、夜の、天を照らしたのである。

闇の中に、煌々と輝く、月の光は、とても、魅力的だった。
その月の出ない夜は、どのようにして、妻を、思うか、という。

天照るといえば、太陽であるが、恋の思いは、太陽より、月の方に、軍配が上がる。
夜の闇の中で、月の光を、眺めて、愛する妻を、思い続ける。

何になそへて
何に、なぞられて、妻を偲ぶのかである。
妻の存在は、闇夜の、月の光なのである。





posted by 天山 at 00:00| 伝統について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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