2009年07月13日

神仏は妄想である 242

ところで、密教というものを、日本の精神史から、見つめた、亀井勝一郎の、日本人の精神史研究を、見る。

平安期の最大の特徴は、十世紀から十一世紀にわたる藤原の全盛期にみられるが、しかし九世紀における空海(弘法大師)の出現と密教の成立は、日本精神史の重大な事件であって、まづここから語らなければならない。
亀井

そのように、位置づけほど、それは、大きな出来事であった。

奈良期に接続しつつ、民族変貌期の巨大な頂点を示すとともに、日本人の思考方法にひとつの規範を与えたからである。また民族的規範における讃仰が後世長くつづいたことである。
亀井

万葉集には、仏教の影響が実に、希薄であるが、反面、国分寺のような、仏教精神の、受け入れがある。
それが、相対することはなかった。

しかし、文学は、漢詩文の影響と、その模倣は、激しく、更に、純粋大和言葉も、同時に連続していたのである。

亀井は、その、文学と、信仰の二面性という観念で、取り上げる。

そして、
空海が直面したのは、この二元性及び仏教自体のもつ多様性(多くの如来・菩薩・天部の大群)をいかに一つの秩序に包括するかという問題であった。
と、言う。

ここで単なる理論的操作として、「統一」とか「綜合」という言葉を使うのは危険である。どこまでも信仰を基本として、仏教自体のもつ汎仏論的性格を、或る極限まで拡大したならば、それは可能ではないか。言わば信仰の極限とは何か、これが空海のさがし求めたところである。思想上の混乱を経てきた時代の要請でもあるが、そこには彼自身の博学の苦悩ともいうべきものもあったにちがいない。
亀井

文芸評論家は、評論という、表現の、芸術活動である。
空海を、そのように、評価するということも、納得する。

空海はむろん歌人ではない。彼の作として伝えられた短歌はあるが、伝説であり、しかも歌としては稚拙である。それにも拘らず二元性の克服の方向を辿ったのは、「神ながら」自体と鎮魂のしらべが変質してくるとともに、彼の宗教的体験とは一種の詩的体験であったからである。言葉の誕生と生成の秘密を、密教的に解明し組織化した面を私は挙げたい。
亀井

しかし、亀井は、空海の、宗教体験を知らない。更に、密教的という、言い方は、実に、曖昧である。

そして、亀井は、
それだけではなく、仏教各宗の教義はもとより、日本固有の神々をも、「曼荼羅」のうちに包括しうる可能性を示した。
と、言う。

これは、単なる、野心である。

後世の神仏習合を直接説かなかったが、彼の密教は「神ながら」と密着しうる要素をもっていた。・・・
空海は史上最後の密教思想詩人と言えるのではなかろうか。
亀井

空海の、過ごした時代を、俯瞰してみると、奈良の、平城京から、京都の平安京への、遷都がある。
そして、淳仁天皇三年、759年は、万葉集の歌が、この年で終わる。

この頃から、九世紀にかけて、上代以来の、名門が、没落してゆく。そして、藤原一族の時代である。

更に亀井は、藤原によって、天武以来の皇親政治は、完全に終焉したという。

すなわち、藤原一族によって、政治というものが、変わったというのである。
藤原摂政時代である。
しかし、それも、いずれ、院政期となって、藤原の没落に至る。

藤原の、血が天武の血統を、薄めた。
しかし、逆に、天智の血統が、台頭してくるのである。

さて、唐文化の影響は、七世紀以後、深まる。そして、平安京への、遷都とともに、一段と、徹底される。
「うた」が、衰退して、漢詩文の黄金時代がくる。
平安京の、規範も風習も、極端に、唐化される。

大伴家持に代表される、復古への、憧れは、あったが、平安京のエネルギーに、取り込まれてしまう。
大伴家持の、万葉集編纂は、その代表的作業である。

さて、空海である。
彼は、衰退する、佐伯一族の、出である。
藤原氏の、進出は、幼少の頃より、実感として、感じていたはずである。

儒学、文章学を学び、官へ仕えることを、薦められたが、それを、拒否して、出家するという、動機には、時代の、変貌にあるともいえる。

そして、野心である。

政治の上では、もはや、生きているうちは、中央政界での、確約は、望めないのである。

そして、当時の、国分寺中心の、仏教と、僧尼たちの、退廃。
出家と、在家との、区別が、曖昧であったために、生じた、風俗を、乱す行為。

そして、貴族たちの、退廃振りである。
その貴族たちは、アクセサリーのように、仏教を利用していた。
軽薄な、無常観である。

宗教の最大の敵は、それ自体の内部に醸成される惰性だ。すべての退廃はそこに発すると言ってよい。
亀井

その、惰性を、空海は、観たようである。



posted by 天山 at 00:00| 神仏は妄想である。第6弾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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